2020年6月14日日曜日

ICD 11における解離性障害の分類 6


次は6B12 離人感・現実感喪失症 Depersonalization-Derealization Disorder


「離人感・現実感喪失症は、非個人化、非現実化、またはその両方の永続的または反復的な経験を特徴とする。」何じゃこりゃ! ここであるネットで拾った翻訳を使っているが、ここの部分は書き換えが必要だ。非個人化、って何のことだろう。英語の本文は、”Persistent or recurrent experiences of either or both depersonalization or derealization.” だから、このまま訳せばいいのである。
「離人depersonalization や現実感喪失 derealization のどちらも、あるいは一方が継続的、ないしは反復的に体験されることを特徴とする。」が正解である。
以下の部分もほぼ全面的に訳しなおした。
「離人症は、自己を奇妙な、あるいは非現実的であると感じたり、自分の思考、感情、感覚、身体、または行動から切り離されたりdetached fromそれらの外部観察者であるかのように感じることを特徴とする。離人症はまた、情緒的ないしは身体的に麻痺したように感じたり、自分を遠くから眺めたり「劇の中にある」と感じたり、知覚的な変容(例えば時間の感覚の歪曲)の形をとったりする。
原文は、Depersonalization is characterized by experiencing the self as strange or unreal, or feeling detached from, or as though one were an outside observer of, one’s thoughts, feelings, sensations, body, or actions. Depersonalization may take the form of emotional and/or physical numbing, a sense of watching oneself from a distance or ‘being in a play’, or perceptual alterations (e.g., a distorted sense of time).
現実感喪失症は、他人や事物や世界が奇妙で非現実的である(例えば夢を見ているようだったり、遠くに感じたり、霧がかかったような、生命のない、色のない、あるいは視覚的に歪曲されたものと感じる)と体験されたり、周囲から自分が切り離されていると感じたりすることを特徴とする。
原文は、Derealization is characterized by experiencing other persons, objects, or the world as strange or unreal (e.g., dreamlike, distant, foggy, lifeless, colorless, or visually distorted) or feeling detached from one’s surroundings.

6B13トランス症 Trance Disorder
まず出来合いの翻訳。
「トランス障害は、個体の意識状態の顕著な変化または個体の慣習的な感情の喪失を伴うトランス状態を特徴とし、個体が直近の周囲の意識を狭めること、または異常に狭く選択的に環境の刺激、運動、姿勢、およびスピーチを自分のコントロールの外にある小さなレパートリーの繰り返しに制限することが含まれる。」うーん、今一つだなあ。「個体」というのは特にひどい。まあ ”individual” こう訳しているのだろうが。そこで原文を見ると以下の通り。
Trance disorder is characterized by trance states in which there is a marked alteration in the individual’s state of consciousness or a loss of the individual’s customary sense of personal identity in which the individual experiences a narrowing of awareness of immediate surroundings or unusually narrow and selective focusing on environmental stimuli and restriction of movements, postures, and speech to repetition of a small repertoire that is experienced as being outside of one’s control.
やっぱりね。individual が「個体」はないよね。この原文も、6行で一つ文章になっていて、英語でも悪文である。そこで二つに分けつつ訳すのが「翻訳道」の正しいやり方だ。そこで訳しなおす。
「トランス障害は、個人の意識状態の顕著な変化または個人のアイデンティティの通常の感覚の喪失を特徴とする。この状態では個人は直近の環境への気づきの範囲が狭まり、環境からの刺激の選択的な焦点化が生じ、自分でコントロールが出来ないような制限された運動、姿勢、および言動が体験される。」
すごく偉そうなことを言って訳してみたが、読んでみると全然たいしたことがない。まあいいか。