2019年11月9日土曜日

コラムは揺らいでいる 推敲 1


神経細胞の塊=コラムも揺らいでいる

以上、神経細胞という単位ごとに、そこで発生する電気的活動の持つ揺らぎの性質について論じた。しかし脳の活動全体を考えると、一つ一つの細胞自体は驚くほどローカルなレベルで起きている出来事だ。私たちになじみのある地震の比喩を用いるならば、脳の活動全体が中等度の地震のサイズだとすると、神経細胞の電気活動は、それこそ砂粒のずれにたとえられるだろう。しかし巨大な岩盤の揺らぎである地震が実は砂粒の動きと連動しているのと同じように、脳の活動も個々の神経細胞の活動に帰着することができる。ただそのスケールがあまりに違いすぎるので、神経細胞の揺らぎから心の揺らぎを論じることにはあまりにも大きな飛躍がある。
心の揺らぎについては第3章で論じるとして、ここでは神経細胞の揺らぎに話をとどめておきたいが、次のレベルとして私が挙げるのが、大脳皮質の円柱、コラムという単位である。
神経細胞 → マイクロコラム(円柱) → 機能円柱 → ~野(運動野、など) → ~葉(前頭葉、など)

大脳皮質は厚さ2.5ミリほどであり、それが6層の構造からなる。このコラムは大脳皮質のいたるところで見られる。感覚をつかさどる一次体性感覚野や、運動をつかさどる一次運動野などでもそうだ。直径0.5mm ほどのコラムには 約10万個もの神経細胞があるが、その詳細な構造や機能はまだよく分かっていないという。
もう少し詳しくは、sideswipe http://kazoo04.hatenablog.com/entry/agi-ac-4 の記事を参照した。
「ミニ円柱(minicolumn) とよび、2540μm ほどの大きさです。人間の大脳には200億個のニューロン2億個のミニ円柱があると見積もられています。つまり、1つのミニ円柱の中にはだいたい100個くらいのニューロンが含まれていることになります。さらに、このミニ円柱が100個ほど集まって、機能円柱(column)を構成しているといわれています。「いわれている」というのは、ミニ円柱と機能円柱の関係がまだ明確にわかってないためです。ただ、1つの機能円柱に含まれるミニ円柱は、似た刺激に対して反応するので、機能円柱が大脳皮質の処理における最小単位だといえます。ここまでをまとめると、大脳皮質は機能円柱という縦長の柱のような構造から成っており、その機能円柱がびっしりと密集することによって1枚のシート状の組織になっているのが、大脳皮質です。」
つまりコラムは、神経細胞の10010000個の塊で、いわば小石くらいの大きさの塊と考えることができる。それがいいたかったのだ。
さてこの沢山のコラムがいわば数多くの揺らぎの単位となって、脳の活動を行うという大胆なアイデアを提示したのが、ウィリアム・カルビンという脳科学者がいる。彼の「大脳のコードThe Cerebral Code:」(1996年、未邦訳)は脳細胞の揺らぎというテーマではぜひ参照したい書物である。
The Cerebral Code: Thinking a Thought in the Mosaics of the Mind (Cambridge, MA: MIT Press, 1996