2019年9月27日金曜日

フェレンチ再考 9


さてさて・・・・
そろそろこのフェレンチシリーズも終わりにしたいが、いろいろ論文を読んでいるうちに、私はやはりフェレンチはクロだ、と思うようになった。クロだ、という言い方は穏やかでないし、フェレンチに対して失礼かもしれない。しかし以前にラックマンの文章を紹介した際に、私は少し甘く見ていたのだ。彼によれば、フェレンチが境界侵犯をしたとされる根拠は二つしかないという。一つは例のトンプソンの「パパフェレンチは好きなだけキスしていいと言ったのよ」という不用意な発言で、もう一つはエルマ・パロスとの関係だ。でもエルマとフェレンチは婚約者となったのだし・・・とフェレンチの境界侵犯のことを私は軽く考えたかったのだ。でもエルマの件はやはり問題にせざるを得ないのは、エルマが後にマイケル・バリントに送った手紙があるからだ。私が訳してみる。
ちなみにこの文章が掲載されているDupont の論文はただでダウンロードできてしまう。
Dupont J. (1995) The story of a transgression. J Am Psychoanal Assoc. 1995;43(3):823-34. 
  
何回かの(カウチによる)セッションの後、サンドール(訳注:フェレンチのこと)は私の後ろの椅子から立ち上がり、カウチの私のそばに座り、明らかに情熱に駆られて私にキスをし、大変興奮しながらどれだけ私を愛しているかを告げ、私に彼を愛すことが出来るかを尋ねてきた。私はそれが本当かどうかは分からなかったが、彼に「はい」と答え、私はそれを本当に信じたいと思った。私はサンドールのことを分析の最中に思っていたほどに愛していないことに気が付くまでに、彼が何度私の婚約者として私達とのランチを共にするために訪れたかはわからない。

考えても見よう。エルマはフェレンチの浮気相手かつ患者であるギゼラの娘である。娘が恋人を亡くして落ち込んでいるというので、ギゼラが治療をお願いしたのだ。そのエルマとこうなってしまっては、やはりイカンだろう・・・・、フェレンチ先生。