先ずAIがもっぱら関わることになる支持的精神療法についての話から始める。支持的精神療法の対になるのが表出的精神療法であるが、これらは両方とも「精神療法 」なるものの二つの種類ということになるが、その精神療法とはどのような意味か?
精神療法 psychotherapy は文字通り心を治療する手段という意味だが、それは精神分析以前に存在していた。Ellenberger によれば、1890年頃にこの精神療法という言葉が欧州で一種の流行を見せたという(viii)。そこにFreud が登場し、精神療法の一種でとしての精神分析を作り出したのである。
精神療法の一つとしての精神分析はその後非常に大きな成功を収めた。しかしそれは週に5回も6回も治療に通い、月単位、あるいは年単位という時間がかかることもあり、次第に精神分析を十分に応用できない人たちをどのように治療するかという問題が生じ、改めて精神療法の在り方が問われることになった。そして精神分析的な手法を維持しつつ、回数だけを減らす「表出的精神療法」と、それ以外の「支持的精神療法」とに分かれたのである。
このように考えると、支持的精神療法は「あまり分析的ではない精神療法」ということになり、精神分析こそが最高の精神療法だと考えらえてきた伝統の中ではあまり有効ではない、次善策としての精神療法というニュアンスを負っていた。そしてそこには精神分析こそが唯一最高のの治療法であるという考え方が背景にあったからである。