2024年8月3日土曜日

解離性障害 Q&A 推敲 4

 ④家族や友人はどのようなサポートをすることがいいのでしょうか?

 この問いは少し複雑な問題を含んでいます。家族や友人による障害の理解が大切であることは言うまでもありません。しかし同居中の家族の存在そのものがストレスとなったり、解離性障害を悪化させたりしている可能性があります。場合によっては当人を原家族から救い出すための第三者の存在が不可欠であったりします。しかしここでは家族や友人がご本人の問題を理解し、援助する能力や立場にあることを想定しましょう。
 当人が早くから解離症状を自覚している場合も少なくありません。しかしそれを周囲に伝えることに抵抗を感じることが非常に多いようです。特にそれが幼少時からの家庭環境に根差している場合、親に自分の心や体に起きていることを伝え、分かってもらうという体験を持たず、むしろそれを秘密にしておく傾向があります。また学校や職場でも、周囲からおかしな人と思われるのではないかという懸念から、症状を隠す傾向もあり、そのためこの障害の同定がより難しくなります。
 しかし他方では周囲が異変に気が付き、時には解離性障害についての知識を持つ友人や同僚が、当人にその可能性について伝え、場合によっては受診を勧めることで治療が始まる場合もあります。
 当人の過ごす学校や職場には、解離症状が起きた場合にどのように対処すべきかについて伝えることがしばしば助けとなります。しばらく朦朧となったり、失神したりした場合にも、すぐに救急車を呼ぶのではなく、しばらく保健室などで様子を見守るなどの対応がもっとも適切であるということを知ってもらうことは重要でしょう。ただし解離性障害の存在を学校や職場に伝えることで、かえって奇異の目で見られたり差別的に扱われる危険性もあるので、誰に、どこまで伝えるかは難しい問題でもあります。しかし一番親しい友達、職場の上司などには伝えておくことがよい場合が少なくありません。

 最後に解離症状はある意味では特殊な能力が発揮される事でもあるという認識は大切であることをお伝えします。そして病的な程度の解離症状は一般的な傾向としては、安全な環境では次第に軽減され、改善していく傾向にあることも付け加えさせていただきます。


2024年8月2日金曜日

解離性障害 Q&A 推敲 3

③解離性障害の治療には、どのようなものがありますか?

 解離性障害の治療としてはなによりも、専門家により正しい理解に基づいたアセスメントと診断を受けることが大切です。解離性障害は決してその診断が難しかったり特別な専門的な知識を必要としているわけではありません。その意味ではほかの精神疾患と同じです。ただし治療者の側に解離性障害という診断を下すことに抵抗があったり、その疾患自体を受け入れがたいということがいまだに起きています。その意味では非常に特殊な精神疾患と言えるかもしれません。そのために患者さんの中には症状の話をしても怪訝そうな顔をされ、「誰に話してもわかってもらえなかった」という体験をする人が少なくありません。治療者がそれを正しく理解し、説明することはそれ自体が不安の軽減や将来への希望に繋がります。
 いったん精神科の外来への受診が開始され、その病状に対する正しい診断が下された後には、現在の解離症状が継続したり悪化させている要因が取り除かれる必要があります。現在の居住環境や学校、職場でのストレス因が軽減されることが図られる一方ではカウンセリング等により当人の体験している解離症状についての聞き取りや理解が治療の決め手となることが少なくありません。なお現在解離症状そのものに対して効果を発揮する薬物はありませんが、うつ病や不安障害などの問題を同時に抱えている人にはそれらの症状に対する薬物治療なども行われます。
 特にDIDについて言えることですが、治療の主体は何といってもカウンセリング(精神療法)です。カウンセラーを前にして、解離されている心の部分が表現されていくことが患者さんにとってとても大切です。患者さんはそれまで自分の心を自由に表現できないような環境にいた為に、解離の症状が長引いていた可能性があります。いったん自由な自己表現が出来るような他者との関係を持つことで、解離の症状は徐々に改善していく傾向にあります。その最初のステップがカウンセリングなのです。

2024年8月1日木曜日

解離性障害 Q&A 推敲 2

 ②解離性障害にはどのような種類がありますか?

 解離性障害のいわば基本形としてあげられるのが、解離性健忘です。これはある出来事についての記憶(いわゆるエピソード記憶)が後になって思い出せないという状態です。特に大きな精神的なトラウマが生じた場合には、それまでに解離性障害の症状として診断や治療をうけたりしたことのない人でもこの解離性健忘が生じる可能性があります。たとえば震災や交通事故、性加害の犠牲者の一部にはそのエピソードの一部を記憶していないということがあります。また解離性健忘はいわゆるPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状の一部として生じることもあります。解離性障害にはいくつかありますが、いわゆる離人性障害を除いては、この解離性健忘が複雑な形で生じ、あるいは組み合わされることが一般的です。
 解離性障害の中で最も深刻で、精神科の受診のきっかけとなるのはいわゆるDID(解離性同一性障害、昔の多重人格障害)と解離性遁走です。DIDではいくつかの異なる人格が形成され、それぞれが自律的に行動を起こします。そしてしばしばお互いの行動を記憶していないということが生じ、そのことで自分自身も周囲の人々も混乱します。このDIDの背景には、幼少時の長期にわたるストレス体験が考えられます。というのもDIDの患者の多くは、すでに幼少時に解離傾向や別人格の存在がうかがわれるのが一般的だからです。ただし幼少時の虐待などの経歴が明確に見られない場合もあり、この成立の過程にはまだわかっていないことが少なくありません。DIDはこれまでにドラマや小説のテーマとして、やや誇張された形で扱われてきました。
 他方の解離性遁走は一定期間の間自分のアイデンティティを失って遠方をさまようという特徴ある症状を示します。我に返り、あるいは保護されて帰宅した後も、それまでの自分の来歴の一部ないしは全部を思い出せないということが多く、時にはその記憶が戻らないままに終わってしまうことも少なくありません。

 以上述べたもの以外に、解離性障害の中には離人感・現実感喪失症が掲げられています。これは自分の体や心、あるいは外界が膜を被ったようで自然なものとして実感されない状態で、人生のある時点で突然生じ、その後長くその人を苦しめる可能性があります。またこの障害は解離性健忘を伴っていないことも少なくありません。また離人感・現実感喪失症は、他の解離性障害の一部の症状としても、あるいはうつ病の症状としても生じることがあります。

 これ以外に従来転換性障害、身体化障害などと呼ばれていたものも、分類によってはこの解離性障害の中に入ってきます。突然足に力が入らなくなったり、耳が聞こえなくなったり、急に言葉が出なくなったり、という症状が比較的多く聞かれます。これらの症状も、多くはトラウマやストレスをきっかけとして突然生じたり消えたりする傾向にあります。


2024年7月31日水曜日

解離性障害 Q&A 推敲 1

 ①「解離」とは、どのような現象でしょうか?

 「カイリ」という言葉は最近よく耳にするようになっていますが、それを説明することは決して容易ではありません。解離は私たちが特殊な状況で、心や体の状態をスイッチさせることであり、それにより危機を乗り越えることが出来たりします。そこで生じることは実にさまざまで、意識が遠のく、記憶を失う、手足の感覚がなくなる、など、通常の働きが急に抜け落ちるという形をとる場合が多いのですが、時にはどこかから声が聞こえる、自分の口が勝手にしゃべりだす、手足が勝手に動き出す、など心身が勝手に動き出すという形を取ることもあります。解離は意図的に制御することは出来ず、突然始まることが多いため、当人も周囲も戸惑うことも少なくありません。この解離症状には、いわゆる幽体離脱や憑依現象、こっくりさん、多重人格状態、スポーツで見られるイップスなども含まれます。

 解離がどの様な現象かを説明しようとすると、少し抽象的な言い方になりますが、心や体に「自分以外の中心」が現れて心身をコントロールするようになった状態と考えて下さい。なぜそのようなことが起きるかはほとんどわかっていませんが、その中心が手足を麻痺させたり、本人の口を借りて勝手にしゃべったり、幻聴として話しかけてきたりします。
 一時的な解離は催眠や、酒や薬物の使用時に起きることがあります。しかし頻繁に生じ、新たな人格まで形成されるような複合的な解離の場合、しばしば原因として考えられるのが、特に幼少時のトラウマや大きなストレスです。その体験の強烈さが自分の心のキャパシティを超えた時に、このような不思議な現象が起きると考えられています。


2024年7月30日火曜日

解離性障害 Q&A その 4

 多くの場合、当人の持っている解離性障害について知識を持つ友人や同僚が当人に解離性障害の可能性について伝え、最後に当人が自らの体験が解離であることを知るということが生じます。当人は自分の中に起きている不思議な現象を話しても理解されないのではないか、おかしな人と思われるのではないかという懸念から、症状を隠す傾向もあり、そのためこの障害の同定がより難しくなります。
 いったん精神科の外来への受診が開始され、その病状に対する正しい判断がなされたのちには、現在の解離症状が継続したり悪化させている要因が取り除かれる必要があります。現在の居住環境や学校、職場でのストレス因が軽減されることが図られる一方ではカウンセリング等により当人の体験している解離症状についての聞き取りや理解が治療の決め手となることが少なくありません。また解離症状そのものに対して効果を発揮する薬物はありませんが、うつ病や不安障害などの問題を同時に抱えている人にはそれらの症状に対する薬物治療なども行われます。

④家族や友人はどのようなサポートをすることがいいのでしょうか?

 この問いは少し複雑な問題をはらんでいます。もちろん家族や同僚のこの障害への理解は不可欠です。ただし解離性障害が幼少時の家庭環境に根差している場合、家族の存在そのものがストレスとなり、解離性障害を永続化させている可能性があるためです。場合によっては当人を原家族から救い出すための第三者の存在が不可欠であったりします。
 学校や職場では解離症状が起きた時の様子、どのように扱えばいいかについてあらかじめ伝えていた方がいい場合があります。例えば暫く記憶を失ったり、朦朧となったり倒れたりする場合に、すぐに救急車を呼ぶのではなく、しばらく教室や仕事場を離れて様子を見守るなどの対応がもっとも適切であったりします。ただし解離性障害の存在を伝えることで特別扱いを受けてしまう、場合によっては差別的な目で見られてしまうなどのことが生じる可能性もあるため、誰に、どこまで伝えるかは難しい問題もあります。しかし一番親しい友達、職場の上司などには伝えておくことがよい場合が少なくありません。

2024年7月29日月曜日

解離性障害 Q&A その 3

  以上述べたもの以外に、解離性障害の中には離人感・現実感喪失症が掲げられています。これは他の解離性障害と違い、人生のいつかの時点で突然前触れもなく生じ、その後長くその人を苦しめる可能性があります。またこの障害は解離性健忘を伴っていないことも少なくありません。ただ離人感・現実感喪失症は、他の解離性障害の一部の症状としても、あるいはうつ病の症状としても生じることがあります。
 これ以外に従来転換性障害、身体化障害などと呼ばれていたものも、分類によってはこの解離性障害の中に入ってきます。突然足に力が入らなくなったり、耳が聞こえなくなったり、急に言葉が出なくなったり、という症状が比較的多いようです。冒頭で解離の説明として「心や体のスイッチ」が生じる、という言い方をしましたが、それはこのように身体感覚や運動のレベルでも生じることが知られており、それも解離性障害と同類であるという考え方も成り立つからです。これらの症状も、多くはトラウマやストレスをきっかけとして突然生じたり消えたりする傾向にあります。


③解離性障害の治療や対処には、どのようなものがありますか?
解離性障害の対処としては、まず正しい理解と診断を得るということが大切です。解離性障害は決してその診断が難しかったり特別な専門的な知識を必要としているわけではありません。その意味ではほかの精神疾患と同じです。ただし治療者の側に解離性障害という診断を下すことに抵抗があったり、その疾患自体を受け入れがたいということも起きています。その意味では非常に特殊な精神疾患と言えるかもしれません。

2024年7月28日日曜日

解離性障害 Q&A その 2

②解離性障害にはどのような種類がありますか?

 解離性障害のいわば基本形として挙げるべきなのが、解離性健忘です。これは過去の出来事についての記憶(いわゆるエピソード記憶)が思い出せないという状態で、特に精神的なストレスやトラウマが関係した出来事が対象になります。これは特に解離性障害として診断や治療をうけたりしたことのない人でも起き得ます。震災や事故、加害行為の犠牲になった人がそのエピソードの一部を記憶していないということがあります。これらの健忘はいわゆるPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状の一部として生じることもあります。解離性障害にはいくつかありますが、いわゆる離人性障害を除いては、この解離性健忘が複雑な形で生じ、あるいは組み合わされることが一般的です。
 解離性障害の中で最も深刻で、精神科の受診のきっかけとなるのはいわゆるDID(解離性同一性障害、昔の多重人格障害)と解離性遁走です。DIDでは異なる人格が一人の人間の中で形成され、それぞれが自律的に行動を起こし、しばしばお互いの行動を記憶していないということが生じ、自分自身も周囲の人々も混乱します。その背景には幼少時の長期にわたるストレス体験が考えられます。なぜならDIDの患者の多くはすでに幼少時に解離傾向や別人格の萌芽が見られるのが一般的だからです。ただし幼少時の虐待などの経歴が明確に見られない場合もあり、この成立の過程にはまだわかっていないことが少なくありません。DIDの状態は比較的多く生じているようですが、過去にドラマや小説のテーマとして扱われてきました。
 他方の解離性遁走は一定期間の間自分のアイデンティティを失って遠方をさまようという特徴ある症状を示します。我に帰り、あるいは保護されてなんとか帰宅した後も、それまでの自分の来歴を思い出せないということが生じ、時にはその記憶がその後も戻らないということが生じます。