2026年7月29日水曜日

AIと精神療法 7

  そこでクオリア問題について、たとえば「猫」を例にとろう。猫は身近な存在であり、おそらく私たちの中で猫を抱いたりなでたり、泣き声を聞いたりするという現実の体験を持たない人はいないだろう。そして「猫」と聞いて感じることがクオリアということになる。それではそのクオリアを言葉に直して表現することを求められるとしよう。  あなたは猫とは「ふわふわで」「動物で」「ペットとして飼われていて」「すごくかわいくて」「でもそっけない態度で」‥と延々と続けることが出来るだろう。猫を身近に体験した人ほどそのリストは長くなるはずだ。  さて大規模言語モデルにより私たちの知っている猫を知識として体験しているAIに「猫についてのクオリアを言葉にしてみてください」と命じるとどうなるか。答えは「私たちとほぼ同等のリストをあげることが出来る」ということになる。それはなぜなのか?  ここで一言でその理由を述べるならば、AIが用いている大規模言語モデルでは、「猫」を多次元ベクトルとして表すから、となる。そしてその多次元ベクトルの一つ一つをリストアップすると、結局は私たちの答えに類似したもの、すなわち「ふわふわで」「動物で」「ペットとして飼われていて」という形になる。しかしその行数はおそらく何千、何万となるのである。つまり猫は、何千次元、何万次元の空間上の一点として表されるのだ。