ちょっとした事情で(実は7月の北海道での学会発表)解離性障害と鬱症状及び自殺の危険について調べている。チャット君に選んでもらった7本の論文のまとめを読むと、ほぼ一貫しているのは、「解離と自殺未遂の関連は極めて強い」ということである。しかし私の発想は少し違った。解離は自殺が既遂に至る事への抑制因子ではないか? なにしろこれまで書いてきた論文で、解離が生き延びるための価値 survival value を有するという考え方は、 広く受け入れられている、と書いてきたからだ。(Putnam, 1989) 一つの思考実験として、DIDを有する人が自殺に瀕している場合を考えてみよう。統計的なデータがないために思考実験に留まるしかないのだが、私の経験では自殺未遂や自傷行為の多さとの対比で、かなり既遂自殺は少ないという実感がある。私の見解は、自殺の間際になると、異なる人格が介入することにより自身の身体を救うという傾向があるのではないかと思う。それは端的に言って、最初の危機的状況で解離が当人を救ってくれたからだ。自殺の瀬戸際にあるという第二の危機的な状況で解離が「生き延びるための価値」を発揮して、本人を救わないというのは理屈に合わないであろう。