ポリヴェーガル理論から見た解離症状
さて相転移は心だけではなく、身体の変化を伴うであろう。人格のスイッチングにより様々な生理的な変化も伴うことを私たちは知っているからだ。そしてそのような突然の変化を説明する上で最も有効なのが、スティーブン・ポージスのポリヴェーガル理論であろう。この理論の画期的な導きの書である「ポリヴェーガル理論」(津田真人)を読むと、こうある。「危機ないし脅威の環境では、皮質レヴェルは作動することなく、あるいはその前に、偏桃体(A)~中脳水道周囲灰白質 (PAG) などの防衛システムが即座に作動する」。このシステム(APAGとしよう) は、安全だとこのAPAGが側頭葉により抑制されているために、皮質と結びついた向社会的行動が生じやすいという。「ニューロセプション」が危機を察した時に発動するこのAPAGは一種のスイッチの役割を話し、それが相転移(人格のスイッチング)にも関与しているのではないか。ただしここで不思議なことは、子供人格の出現は、APAGの発動とは程遠い状況で起きるということだ。これはポージスの考えを借りるならば、向社会的な反応の結果と見なせるのであろうか?
(中略)
この問題がどうこれまでの議論と接続するかというと、解離はトラウマに対する反応という以上の何かであることを表している可能性があるからである。そう、これは解離能の議論につながる可能性があるのだ。