2026年5月17日日曜日

ストレスとDID 11

  いずれにせよ私は、心は危機的な状況でそのネガティブな心的内容を体験している自分自体を隔離する必要があることから解離が生じやすいと考えたわけである。しかしこれは今から考えると抑圧の機制で説明できないこともないとも考える。そして抑圧の場合は、それが身体症状や抑うつや不安という形を取るということになるだろう。  あらためて考えるならば、なぜ解離が生じるかと言えば、危機的状況で当人が解離という手段を用いたから、としか言いようのない事態が起きているのかもしれない。  解離反応の一つの典型例として、私はいつもOBE(幽体離脱)を思い浮かべる。自分が襲われそうになった時に、ふと意識がその体を離れ、それを見下ろしている自分が出現する。それは通常はまったく意図的ではなく、自然に体の反応として生じるのである。そしてそれは明らかに進化論的にかなりプリミティブな段階で生物に備わっているものと見なすことができる。ライオンに駆られたインパラはもがき暴れることなく捕食者のなすがままに任せているように見える。  同様の反応は様々にみられる。動物の子供は首を掴むことでいきなり力が抜け弛緩した状態になる。動物の子供が首(後頭部から肩の皮膚)をくわえられると、急に動かなくなり弛緩する現象は、科学的に「輸送反応(Transport Response)」と呼ばれているという。親が敵から逃げる時や巣を移動する際、子供が暴れると移動の邪魔になったり、敵に見つかりやすくなったりする。そのため、首をくわえられたら動かずにいることで、親は子供をスムーズかつ安全に運ぶことができるという。  そしてこの反応は、心拍数を低下させ、泣き声を止め、体を丸めて運ばれやすい姿勢にする効果があるという。このように考えると、ライオンが捕食の際に首に噛みつくのは、そこに頸動脈があるからだけでなく、この輸送反応により捕食者を大人しくさせるという目的があるのかもしれない。  ここであるケースが語っていたことを思い出す。「外に出ている人格に引っ込んでもらう時、私は奥の手を使います。その人格の首のあたりを掴むんです。するとその人格はおとなしくなり、私が取って代わります。」