2026年2月2日月曜日

ショア書評 ⑥

 第11章 母子アタッチメント関係の臨床評価を導くための調整理論の使用

(452) 「ほとんどの精神疾患は、以前考えられていたよりもずっと早い段階で発症する」とインセルはいう。胎内及び出生直後の養育者との関係が、乳児のゲノムのエピジェネティックな変化を起こすという知見はもっともショッキングであろう(456)。
右半球は、妊娠最後の3か月から2.5~3歳までの間に重要な成長期を迎える。それにより社会情動的な発達が遂げられる。また乳幼児の脳の体積が生後一年で二倍になるという驚くべき事実が強調され、だからこそこの一年は決定的であり、そして将来の右脳の発達軌道を強化するうえでの予防が示される。
(469)最初の一年で(乳児の脳の)全体の体積は101%増え、2年目で15%。皮質下領域は最初の一年で130%増加し、2年目に14%増加する。

第12章 ジェニファー・マッキントッシュとの対話
(516) アメリカでは多くの母親が出産後6週間後に仕事に復帰する事実をあげ、子供をデイケアに預けることの懸念が示される。
(517) 乳児はストレス下でむしろ引きこもってしまう可能性があるという、それは重度の対人ストレスや関係外傷によるものであり、そうなると子供は泣かず、目も合わせない。そこで親が子供は泣いていないからだいじょうぶだと考え、放置すると、その沈黙状態ではストレスホルモン(コルチゾール)は泣いているときよりさらに高くなるという。
(520)直接暴力を受けなくても、両親間の暴力にさらされている子供ではストレスホルモンが過剰に分泌され、それが脳の発達に悪影響を及ぼす。ネグレクトにおいても同様な過剰なストレスホルモンの分泌が起きる。ただしストレスそのものが悪いというのではなく、それに対処できないでいることが問題なのだ。

訳者があとがきで述べているように(525)、わが国ではまだ力動精神医学と生物学的精神医学が統合に向かっているとはいえず、その意味でこのショアの業績を追うことは我が国の精神医学にとっても重要な一歩であろうと評者は考える。
最後に掲載されているアラン・ショア著作用語集は小林氏の手によるものであるが、極めて貴重で分かりやすいものである。