2025年8月9日土曜日

FNDの世界 推敲 1

FNDの歴史について。結局最初に長々しく断り書きを入れることにした。

はじめに

  本稿ではヒステリー(変換症、FND)の歴史を精神医学の立場からさかのぼる。初めに本稿で用いる用語について述べたい。変換症とはDSM-5以降我が国の精神医学においてconversion disorder の訳語として用いられるようになったものであり、それ以前は転換性障害、転換症などとされていたものを、脳波異常を伴う癲癇(てんかん)との混同を避ける意味でこのように言い換えたものである。そこで本稿での変換症とは従来の転換性障害と同義語として用いることにする。またFNDとは機能性神経症状症 functional neurological disorder の頭文字であり、これはDSM-5において conversion disorder に代わって提案された表現であるために、2013年のDSM-5の発刊以前の時期に関して論じる際には変換症、それ以後はFNDとして言い表すことにする。もちろん両者を統一してFND(または変換症)とすればいいであろうが、実際に当時存在せず、概念としても異なるものをそう呼ぶことにも抵抗があるために、このような呼び方をする。また変換症とFNDは、その病態としての表れは同一のものという前提で論じる。