2024年10月7日月曜日

解離における知覚体験 1

 また原稿依頼。解離関係だから勉強になるし、受けてみようか。テーマは、「解離における知覚体験」である。

解離症における知覚体験について論じるのが本稿のテーマである。解離症の臨床を通じて体験されるのは、患者は様々な異常知覚を訴えることが多いということである。解離症は一般的には、

「意識、記憶、同一性、情動、知覚、身体表象、運動制御、行動の正常な統合における破綻および/または不連続」により特徴づけられるものとして定義される(DSM-5-TR)。そして知覚体験についてもその欠損や異常知覚が、その他の心的な機能との統合を失った形で見られる。そしてそれらは統合失調症由来のものや脳の器質的な異常により生じるものとの鑑別が必要とされることになる。特に注意深い検討が必要なのは統合失調症性の知覚異常や幻聴体験との異同であろう。

病的な知覚体験としてしばしば論じられるのがいわゆるフラッシュバックに伴う体験である。PTSDなどのトラウマ関連障害で患者は過去のトラウマ体験が突然知覚、感覚、情緒体験と共に蘇る。この体験を解離の文脈でどのように位置づけるかは議論が多いが、DSM-5(2013)においては「フラッシュバックなどの解離体験」という表現を用いてそれを解離性のものとして理解する方針を示している。より正確には、「トラウマ的な出来事が再現されているかのように感じ、行動するような解離反応(例えばフラッシュバック)dissociative reactions (e.g. flashbacks)in which the individual feels or acts as if the traumatic event(s) were recurring)」 と書かれている。

さてここからの記述は情報源として取りあえずネタとなる一つの論文。Nurcombe B, et al (2009) Dissociative hallucinosis in Dell and O’Neil (eds) Dissociation DSM-IV and Beyond. Routledge. を読んでみる。ここには「昔から幻覚 hallucination と擬幻覚 pseudohallucination の違いについてはいろいろ議論されてきた」(p.551)と書かれている。そうか、そのような言葉があったのだ。統合失調症も解離も両方とも幻覚です、という言い方はあまり出来ないらしい。