2022年6月25日土曜日

治療者の脆弱性 推敲 1

  治療者の脆弱性というテーマでまず私が心に思い描いたイメージをお伝えしたい。それは脆弱性など持たない、ある優れた治療者のイメージである。私は治療者の持つ特徴として重要なのは十分に敏感であることである。治療者が自分の心の中に起きていることと患者の心の中に起きているであろうこと、あるいは患者が時には暗黙の裡に、または微妙な形で送ってきているシグナルに敏感でないならば、治療者として十分に機能できるかは疑わしいであろう。もちろん受け取った信号にどのように反応するか、あるいはしないかはもう一つの重要な点であろうが。ともかく感じ取ることが出来ること。それが大事なのである。
 しかしここにもう一つの重要な条件があり、それがレジリエンスである。つまりストレスに反応しつつ、しかし自分自身が安定していること、一時的に大きく揺れてもたちなおれることであること。もし敏感な心がそれゆえに大きく揺れて、崩れてしまっては治療者はその役目を果たすことはできないであろう。だからたとえて言うならば理想的な治療者の心とは「しなやかだが折れない枝」のようなものである。

さてこの繊細だがしなやかで折れにくい枝のイメージと脆弱性はどのように関係するのだろうか? それはこのように「しなやかだが折れない枝」のような心は、理想の姿ではあってもおそらく現実には存在しにくいであろうからだ