2020年7月8日水曜日

ICD-11における解離性障害の分類 書き直し 2

解離性障害全般に関する定義
 まず解離性障害全般に関する定義としては以下のように述べられているが、これまでのDSM,ICDによる定義とおおむね一致している。
「解離性障害は、アイデンティティ、感覚、知覚、感情、思考、記憶、身体の運動または行動の統御のうち一つないしそれ以上に関して、正常な統合が不随意的に破綻したり不連続性を呈したりすることを特徴とする。」もちろんここには薬物や神経学的な疾患による二次的なものを除外するというただし書きが続くが、本質部分はここに尽くされている。そしてそれぞれの特徴ごとに以下の障害に分類される。それをWHOのサイトで限定公開されているICD-11 Guidelines. (Disorders Specifically Associated with Stress. Schizophrenia and Other Primary Psychotic Disorders) に従って紹介する。  


B16  部分的解離性同一性障害 Partial dissociative identity disorder
部分的解離性同一性障害においては、二つ以上の異なる人格状態(解離性アイデンティティ)の存在を特徴とする同一性の破綻があり、そこでは自己および能動agencyの感覚の顕著な不連続性がみられる。それぞれの人格状態は、自己、身体、環境を経験し、知覚し、理解し、それらと関係する上での独自のパターンを有する。一つの人格状態は優勢 dominantであり、正常な日常生活(例えば養育や仕事)において機能しているが、1つ以上の劣勢 non-dominant の人格状態によって侵入される(解離的侵入)。それらの侵入は、認知的(侵入的な思考)、感情的(恐れ、怒り、恥などの侵入的な感情)、知覚的(例えば侵入的な声、一過性の視覚、触れられた感じなどの侵入的な感覚)、運動的(例えば片方の腕の不随意的な動き)、または行動的(例えば能動感や自分自身の行動という感覚が欠如した行為)であろう。それらの体験は優勢な人格状態にとってはその機能を妨害されたと体験され、通常は不快である。劣勢の人格状態は、日常の特定の場面(例えば養育や仕事)を繰り返し行うほどには、意識や機能の実行統御を行えない。しかし特定の人格状態が限定された行動(例えば極度の感情的な状態や自傷のエピソードの最中や外傷的な記憶の再演の際の反応として)に携わるために実行統御を行うような、挿話的で限定された一過性のエピソードがありうる
6B81 
解離性健忘 Dissociative amnesia 
  重要な自伝的記憶、特に最近のトラウマ的ないしストレス的な出来事に関することがらを想起できず、それは通常の忘却としては説明がつかない。そしてその記憶喪失は、別の解離性障害の間にのみ起こるものではなく、その他の精神的、行動的または神経発達障害によっても合理的に説明されることはない。 記憶喪失は、物質または薬物が中枢神経系に直接的影響(離脱効果を含む)を及ぼしたものではなく、神経系の疾患または頭部外傷によるものではない。
  なお解離性健忘は解離性遁走が存在するか否かによりさらに分類される。すなわち遁走を伴うものは、「(健忘の間は)個人のアイデンティティを喪失し、長い期間(通常は数日から数週間の間)家や仕事や重要な他者のもとから旅立ち、その間新たなアイデンティティを獲得することもある。」とされている。