2020年4月21日火曜日

揺らぎ 推敲 51



 揺らぎを論じる上ではアトラクターという概念もとても重要になってくる。といってもアトラクターという言葉の意味がわからないとこの話はピンとこない。
アトラクターとは簡単に言ってしまえば、システムの動きがそれに向かって収束していく場所、ということになる。ただしいったん収束したかのように見えて、また飛び出して入ったりもする。またその収束していく場所は一点とは限らない。それはある一定の状況であったり、一定範囲内での動きであったりする。幾何学的に表現すれば、それは点ではなく、面であったり、立体構造だったりする。
アトラクターの中には不思議な形をしたものもある。立体空間である点の動きが図のような不思議な立体構造に収まる場合があり、それには「ストレンジ・アトラクター」という名前がついている。このストレンジ・アトラクターに落ち込んだ動きは、それを二次元の面に投影したならば、まさに揺らいでいるように見えるだろう。だから一定の範囲内を揺らいでいるなにかは、一時的にアトラクターに収束している状態を考えていいだろう。
 
アトラクターの意味や面白さを伝えるために皆さんに思い描いていただきたいのは、台風である。例えば2019年のお盆休みに突入していた日本列島は大騒ぎだった。超大型の台風10号が日本に接近し、815日には山陽新幹線が全面的に運休を計画した。更にそのあと10月に来た台風19号のおかげで、1012日は一日東海道新幹線が運休したのである! なんというはた迷惑な話だ。
しかしいくらテクノロジーの進んだ現代社会でも、この様な傍若無人な台風の振る舞いをコントロールすることなど全くできない。太平洋上に巨大扇風機を何万台持って行って空気をかき回してもだめだ。何しろ北半球の太平洋領域の空気はみなこの大渦巻を維持し、さらに発達させるように動いているからだ。誰もこれを止められない。・・・・・これがアトラクターの現れ方だ。ただしこのアトラクターもやがては消えていく。日本列島を北上するころには熱帯低気圧になって消えてしまうことが多い。木星に見られる大赤斑のように発見されてから350年以上も続いている(これには異説もあるらしいが)台風もある。