津田氏の胸を借りてこの理論をもう少し勉強したい。とにかくよくできた本で、おそらくポージス理論の深い理解(あるいはそれ以上)に基づく本と言える。コラムGではアイコンタクトとグルーミングについて書かれているが、印象的なのは、愛着に相当することは生物では本能に近い形で提供され、それによりエピジェネティックな変化が起きることが、その個体の社会的な生存を保証しているということだ。
例えばラットは生まれた後母親から十分なリッキングを受けることでストレス耐性が付き、その臨界期は10日であるということだ。そして「ストレス耐性」とひとことで言っても、きわめて複雑なメカニズムがそこにある。改めて書くのも大変だが、以下のとおりであるという。
リッキング、グルーミングによる甲状腺ホルモンの放出 ⇒ セロトニン作動性神経の活性化 ⇒ 海馬によるグルココルチコイド受容体の増加 ⇒ グルココルチコイドのネガティブフィードバックの増大とそれによる減少。ここら辺はまさに生後の体験によるエピジェネティックなスイッチが入る部分だろう。そしてこのリッキングなどを受けていない個体は、恐怖心で「外出」できなくなってしまう。このことは人間の愛着トラウマにも言える。このリッキング、グルーミングに相当するプロセスを人間の母子は長期にわたって行うわけだが、その失敗がその後の人生に大きな影響を及ぼすことになる。ポリベーガル理論では、要するにここに深く関係しているのが腹側迷走神経系の機能不全ということだろう。わかりやすく言えば、愛着不全、愛着トラウマ = 腹側迷走神経系の機能不全、それによる交感神経の過度の興奮、時には背側迷走神経系の動員、ということになる。
ニューロセプション
ところで環境がいよいよ脅威に感じられた時に信号が送られるのが、扁桃核である。そしてその中心核と密接なつながりのあるPAG (中脳水道周囲灰白質)という部分である。そしてその背外側部分 (DLPAG) の部分が刺激されることで起きてくるのが解離性の反応である。ここら辺は重要だからおさえておかなくちゃ。