この攻撃者との同一化というプロセスが、具体的に脳の中でどのような現象が生じることで成立するかは全くと言っていいほど分かっていません。唯一ついえるのは、私たちの脳はあたかもコンピューターにソフトをインストールするのに似たような、自分の外側に存在する人の心をまるでコピーするかのようにして自分の心に宿してしまうという現象が起きるらしいということです。それが、たとえば誰かになり切った様にして振舞う、という意味での同一化と明らかに異なる点です。こちらの場合はあくまでも主体は保たれていて、その主体の想像の世界で誰かの役を演じているわけです。しかし解離における攻撃者との同一化では、その誰かが文字通り乗り移って振舞う、ということがおきます。
皆さんは憑依という現象を御存知でしょう。誰かの霊が乗り移り、その人の口調で語り始めるという現象です。日本では古くから狐に憑くという現象が知られてきました。霊能師による「口寄せ」はその一種と考えられますが、それが演技ないしはパフォーマンスとして意図的に行われている場合も十分ありえるでしょう。
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