2018年8月28日火曜日

解離ートラウマの身体への刻印 25

「身体への刻印」 第三のタイプ
自律神経系への刻印またはPolyvagal theory ポリベイガル・セオリー
トラウマと身体との関連で、最近注目されているのが、自律神経系である。自律神経は全身に分布していて、血管、汗腺、唾液腺、あるいは胃、腸管、肝臓、腎臓、膀胱、肺、瞳孔、心臓などの臓器、そして感覚器官を支配している。ただしそれは不随意的であり、意識的にコントロールできないため、その過剰(過少)な働きは症状となって表れやすい。
例えば職場のストレスを抱える人が、出勤の途中でめまいが起き、心臓がドキドキしたかと思うと汗が出てきて嘔気がする、などの形をとる。これらの症状の扱いは、第二の刻印のタイプとして示した、転換症状とは大きく異なる。すでに述べたように、転換症状は神経学的な所見となって表れる。患者さんは神経内科や眼科、耳鼻科などを受診する。症状の表れている器官は部位は特定できている。しかしめまいや動悸や発汗はいわば不定愁訴の類であり、その原因は不明であったり、あまりに多くありすぎて特定することが難しい。そしてこれらはうつ病の身体症状としても数えられる。患者さんはまずは内科を訪れ、その一部は心療内科や精神科へ紹介されるであるだろう。
さて今うつ病の身体症状を言ったが、これらの自律神経症状は様々な内科的な症状となるとともにうつ病その他の種々の精神疾患にも伴う。するとトラウマと自律神経症状はどのように関連しているのか。自律神経症状はトラウマの身体への刻印としての意味を持つのであろうか?
実はそうなのである。自律神経症状とトラウマの関係は最近のトラウマ研究のひとつのトピックとなっているのであるが、自律神経はトラウマやストレスと密接な関係があることが明らかになりつつあるのだ。