2017年5月18日木曜日

未収録論文 ⑫

この論文、以前このブログに登場し、「こんなの書いたなあ」と書いていることが分かった。まだどこにも再録されていないなあ。「精神分析研究 2008年」のどこかの号に掲載された。

転移解釈の意味するもの ―自我心理学の立場から

抄録
 精神分析において転移の概念は極めて重要な意味を担うが、転移解釈のみを本質的な治癒機序と捉える姿勢は過去のものになりつつある。かつて自我心理学のリーダーであったMerton Gill は後に関係論へと立場を推移させたが、その関係論においても転移が治療場面における治療関係にとって持つ意味は極めて重視される。そこでは転移の解釈がいかなる時に治療的に用いられ、いかなる場合に侵入的となるかについての治療者の柔軟な判断が要求されるのである。転移・逆転移は治療状況において常に生じているが、それを解釈したり操作したりする治療者の力にも限界がある。治療者は移り変わる転移状況を感じ取り、患者と共に身をゆだねることで、すでにその役割の重要な部分を果たしているのである。
     (長い論文だから、抄録だけだ!)