治療者の自己開示ほど「適正価格」が求められるものはないであろう。通常の対人関係を考えてみる。求められてもいないのに自分のことについての話をする人は、見ていてはしたないし苛立たしい。自己開示の押し売りは控えなくてはならないのだ。しかし売り惜しみもよろしくない。すなわち正当な形で求められている自分についての情報を伝えないというのも問題なのだ。だから自己開示には「適正価格」が要求されるのである。これは通常の対人関係についていえることであるが、精神療法における関係性についても同様である。すなわち治療者は自分についての情報は必要に応じて患者に伝える(患者から控える)ということである。したがって分析的な治療者の「匿名性の原則」はあくまでも相対的なものである・・・・
(以下略)