2026年1月3日土曜日

PDの精神療法 書き直し 11

  1)BPDの精神療法

BPDの精神療法に関しては、これまでにさまざまなアプローチが提案され、その効果についてのエビデンスが示されているものも多い。いわばあらゆる治療法が効果的となりうるという印象を受ける。しかし一貫して言えるのは、そこでの治療同盟のあり方が最も重要なファクターであるという事である。またそれらはBPDの脳内基盤である扁桃核の機能亢進とそれに伴う前頭前野の活動の低下を緩和する方向に働ているとみなすことが出来る(Gabbard, 446)。ただしBPDの精神療法の効果について論じることの難しさは、患者の多くがうつ病などの併存症を有していることにある。Fonagy, 206)
現在BPDの治療として無作為化対照比較試験 (RCT)による有効性が確かめられているのは複数あるが、このうちのいくつかについて、以下に述べる。
MBT(mentalization-based therapy メンタライゼーションに基づく治療)の治療の要は、患者のメンタライゼーション機能の強化である。治療者は患者の子供時代の安全な愛着体験が相対的に欠如していた可能性への認識を持ち、明確で首尾一貫した役割イメージを保持し、自分自身と他者の行動が内面の状態により動機付けされることについての患者の体験的な理解の促進に努める。それにより可能な限り自己及び他者に関する多様な視点の可能性を示すのである。(Bateman and Fonagy, 2004)。フォナギーは特にMBTにおいて患者が自分の姿を治療者の心に見出す能力を高めると表現する(Fonagy, 1999)

Fonagy P (1999) The process of change, and the change of processes: what can change in a "good" analysis? Keynote address at the spring meeting of Division 39 of the American Psychological Association,NewYork, Apri,1999.

Bateman AW, Fonagy P(2004)Psychotherapy for Borderline Personality Disorder: Mentalization-Bsed Treatment. Oxford, UK,Oxford University Press.狩野力八郎、白波瀬丈一郎監訳 (2008) メンタライゼーションと境界パーソナリティ障害 岩崎学術出版社.

TFP(transference-focused therapy 転移焦点付け療法)Otto Kernberg (1984) BPDの精神分析的な治療概念に基づき発展した(Clarkin et al 2007) 。TFPでは心的表象は内在化された養育者との愛着関係に由来し、治療者との間で再体験されるという理解に基づく治療を行い、その点はMBTの類似する。主たる治療技法は、患者と治療者との間で展開する転移関係の明確化、直面化、および解釈であるが、特に治療早期から、転移の中でも特に陰性転移が扱われる。セッションは週2回行われ、治療契約と明確な治療の優先順位に基づいて構造化された枠組みを持つ。なおこのTFPはBPD治療を目的として始まったが、他の障害を持つ患者についてもその対象を広げている。

Clarkin, J.F., Levy K.N., Lenzenweger M.F. et al .: Evaluating three treatments with borderline personality disorder: a preliminary mu1ti-wave study of behavioral change. Am J Psychiatry 164(6);922-92. 2007
Kernberg, O.:Severe Personality Disorders: Psychotherapeutic Strategies. Yale Univ Press 1984(西園昌久: 重症パーソナリティ障害―精神療法的方略. 岩崎学術出版社, 東京, 1997)

DBT(Dilalectic behavioral therapy 弁証法的行動療法)は米国のMarsha Linehan (2006) により自殺傾向の強いDBTの患者を対象に開発された認知行動療法の一種である。米国精神医学会によりBPDの治療として推奨されているが我が国での普及は十分とは言えない。DBTにおいては患者は問題解決のための感情調節のスキルを学ぶとともに、自身に対する妥当性を承認される環境を与えられる。治療は個人療法とグループスキルトレーニングなどの複合的な構造を有し、このうち後者ではマインドフルネス・スキル、対人関係保持スキル、感情抑制スキル、苦悩耐性スキルを高めることが目指される。

Linehan M.M., Comtois, K.A., Murray, A.M. et al. :Two-year randomized controlled trial and follow-up of dialectical behavior therapy vs. therapy by experts for suicidal behaviors and borderline personality disorder. Arch Gen Psychiatry 63(7);757-766. 2006

遊佐安一郎、 宮城整ほか (2019) 感情調節困難の家族心理教育―境界性パーソナリティ障害,神経発達障害,摂食障害,物質関連障害,双極性障害などで感情調節が困難な人の家族のために― 精神経誌 第121巻第2号 pp131ー138

DDP(Dynamic Deconstructive Psychotherapy 力動的脱構築精神療法)は、BPDの社会での対人関係に焦点づけられた精神療法である。この治療法は、対象関係理論や神経科学、脱構築哲学などを盛り込んだ治療指針を有し、問題解決やアドバイスではなく、問題の背後にある脆弱さに注目し変革的な癒し transformative healing を提供するものとされる。週に一度のセッションだけでなく、毎日の対人交流シートを活用することを求められる。
Gregory RJ,De lucia-Deranja E, MogleJA (2010) Dynamic deconstructive psychotherapy versus optimized community care for borderline personality disorder co-occurring with alcohol use disorders: 30 months follow-up. J Nerv Ment Dis 198:292-298.


2026年1月2日金曜日

PDの精神療法 書き直し 10

  6.メンタライゼーションを促進すること

後に述べるようにBPDの治療において中核的となるのが、メンタライゼーションの能力、すなわち他者の思考や行動を理解する力であり、その上で自分自身の思考や行動が他者の心にどのように映るかについての理解である。そこでは例えば患者の挑発的な言動について、それを咎めたり早計な解釈を行ったりするのではなく、外界の他者ないしは治療室における治療者にはどのように映るかについて率直に話し合うということである。

7.治療同盟を確立し、維持すること。 PDの心理療法においては治療関係やラポールの成立や維持が極めて重要であり、治療の成否を占うものであるともいえる。このことは数多くの研究が共通して示していることである。上述のメンタライゼーションの促進についても、おそらくそのベースとなるのは治療者が患者に共感し、かつその限界についても自覚しておくことであろう。治療者と患者が相互に自分ないし相手の共感が有限であることを受け入れることは治療の重要なステップと考えられる。

 8.逆転移感情をモニターすること治療者が自分が治療場面でどのような感情状態にあるかについて知ることは、力動的な治療を超えて恐らくあらゆる治療のモダリティにおいて必須である。そのために治療者は適切なスーパービジョンやケース検討の機会を利用する用意がなくてはならない。

9.トラウマの視点を忘れないこと。今の患者のあり方が過去に経験したトラウマを反映している可能性があるという視点を保ち続けることで、患者に向ける共感の質や度合いが変わることがある。もちろんそれはすべてをトラウマで説明しようとする試みとは異なることは言うまでもない。最近の研究が示すのは、愛着不全がパーソナリティ全体にもたらす影響である。これは5にも関連し、治療者は患者の攻撃性に注目すると同時に、それが背後にある傷付きの問題をとらえることによりそれが必要な分だけ相殺される事への自覚が必要であろう。

10.患者を変えようと思わないこと。治療者が治療的なヒロイズムに陥り、患者の不適応的な側面を改善しようと試みることは、時には患者に多大なストレスとなる。患者が発達障害傾向を有する際には、特的のものの見方や行動パターンを変えることは自分の感覚を失うことに匹敵するような意味を持つ。


2026年1月1日木曜日

PDの精神療法 書き直し 9

 今日は元旦だが、執筆は続く。

PDの心理療法の11か条 

PDに対する心理療法を行うにあたり心がけておくべきことをGabbard2017)は実証的な研究と脳科学的な研究から以下の項目について必要性を語っている。(なおこれには筆者による大幅な改変が伴っている。)これらはこれは主としてBPDの治療に向けられたものであるが、広くPD一般に通じるものと考えられる。またどのような治療のモダリティについてもおおむね妥当なものと考える。これらに加えて筆者が必要と感じる項目を以下に述べる。

1.柔軟性を保持すること
治療者が自らの信条を持つのは大切であるが、それまでの訓練に基づく治療技法やアプローチは具体的な患者のニーズに合わせて柔軟に用いるべきであろう。洞察を促す探索的なアプローチと、安全で安心な治療関係を促進する支持的なアプローチはその時々で柔軟に使い分けられるべきである。BPDの治療に際しては治療者が情緒的に揺さぶられることも多く、治療構造を守ることの重要性は言うまでもない。治療構造を崩すことは時には悪性の退行を促進するが、それを警戒することで初心の治療者が防衛的になることは、患者にとっては冷淡で反応に乏しいと思われがちになることにも気を付けなくてはならない。治療はいわば患者との「ダンス」であり、そこで患者が持ち込む様々な関係性のパターンを体験することになるが、それに押し流されることなく、治療者の自発性もまた大きな意味を有する。

2. 精神療法を実行するための条件を確立すること
治療の開始に際しその治療関係が患者にとっても治療者にとっても安全が確保されるべきものとなるように、いくつかの治療契約を結ぶことは重要となる。守秘義務が守られるという保証を与え、料金の支払いや時間の設定が約束されるべきこと、また患者の差し迫った自殺の危険性に対しては入院も必要となる可能性があることを伝えることも大事であろう。セッション間の電話などによる通信に関しては治療スタイルにより異なる対応がなされるが、危機的状況では治療者への連絡が取れる手段を設けておくことは、患者が治療者に理解され抱えられる感覚を得るためには必要であろう。

 3.受け身的なスタンスを回避すること
治療者は受け身的なままにとどまらず、患者が目を逸らそうとしていることに注意を促す必要がある。治療者は患者に、変化を起こすためには努力が必要であるということを伝え、よりよい刺激や現実の提供を行うことに治療者は積極的であるべきである。そして患者が自分のことを考えること、として他者の気持ちを考えることの努力がBPDの治療のためには必要である点を強調する。ただしこのことは患者の過去のトラウマの記憶への直視を促すことを必ずしも意味はしない。(第10か条に関連)

4.治療者は「悪い対象」となるという役目も引き受ける用意を持つこと

患者の多くはわずかなトリガーに反応し、治療者に怒りを向けることがある。それは半ば生物学的に定められている。治療者は客観的、中立的な存在のままでいたいという願望を放棄し、言わば「程よく悪い対象 bad-enough object」となることをいとわないことも重要である。患者から怒りや攻撃性を向けらた時に最低限の情緒反応を有する「生きた人間」としての姿を見せることで、無反応な治療者を力ずくで動かしたいという患者の試みを回避することが出来るかもしれない。
5.怒りの背後にある痛みに共感すること
患者からの挑発に怒りで返すことは、BPDの患者の過去において繰り返された対象関係に加担することになる。むしろその背後にある患者の傷付きに注目すべきである。従来の精神分析的な考え方では、患者が本来有する攻撃性を指摘し解釈することが有効であるとされるが、これには例外がある。特に患者のトラウマや自己愛の傷つきがその怒りの背後にあることを見出すことで、治療者は患者の怒りが自分への個人攻撃ではないことに思い至り、患者からの挑発に乗ることを思いとどまる力となるだろう。

2025年12月31日水曜日

大晦日に思う

 今日はなんと大晦日である。

色々忙しい年であった。いろいろな講演やレクチャー、学会発表のお誘いがあり、特に9月以降は目の回る忙しさだった。しかしそれも12月の半ばで終わり、今はとりあえず3本の書評と一つの依頼論文が残った状態にまでなった。やっと「自由時間」が持てるようになり、それがうれしい。今年は5月で70歳となる。若い頃はこの歳になって人がまだ生きている、という実感がなかった。しかし老いを生きるという事は、ある意味では全く新しい体験となる。何しろ年寄り扱いされるようになってからまだ間がないのだ。その意味での好奇心もそれなりにある。あとはもう少し体力があれば、と思うことがある。しかしその一方で自分がまだ力がみなぎっていた20代に戻りたいかと言えば・‥‥とんでもない話だ。二度と戻ってあの不可解で未来の予想が出来ず、義務感での勉強や仕事に拘束された年代には戻りたくないとも思うのである。

2025年12月30日火曜日

PDの精神療法 書き直し 8

 見立てにおいて必要な指針

ともかくも患者のヒストリーを追うことで必要な情報が得られ、その「認知、感情、対人関係、衝動の制御」(DSM-5)に基づくPDの診断を考慮する際に、従来の臨床家なら、DSMの10のカテゴリーが頭に浮かぶかもしれない。しかし現代の精神科医はもう一つの考える指針を手にしている。それは上述のディメンショナルモデルに掲げられたいくつかの「特性」を手掛かりにするという方針である。その際患者がDSMに掲げられているうちの「どの」PDに当てはまるかを特定する必要はない。その代りPDの深刻さの程度(軽度、中等度、重度)と顕著な特性をいくつか挙げるだけでいいことになっている。
 特性 trait としては、DSMとICDで多少の差はあるが、ここではICD-11 に従うと、否定的感情(鬱・不安などのネガティブな感情が支配的である)、離隔(他者との対人的・情緒的距離を保つ)、非社会性(他者の権利や感情を無視する)、脱抑制(唐突に行動する)、制縛性(強迫的な思考、行動パターン)の5つである。さらにはそれらに並んでボーダーラインパターン(不安定な対人パターンや衝動性、見捨てられ不安)が加えられる。つまり患者の話を聞きながら、これらの特性のどれがどのくらい強いかを考える事になる。
 ただしここに二つの大きな要素が加わる可能性がある。それは最近精神科医や心理士の間で急速に関心が高まっているASD傾向、そしてCPTSD(複雑性PTSD)に見られるパーソナリティ傾向である。もちろんこれらはカテゴリカルモデルにも、ディメンショナルにもみられないものである。ディメンショナルモデルの5つは Goldberg のいわゆる big five factor に由来し、それは最近では生まれつきの気質と環境の相互作用によって形成されるとされている。そしてそこには生来の神経発達障害としてのASDやトラウマ的な環境によるCPTSDに関連したパーソナリティ傾向も入ってきておかしくないことになる。ただし現在ではそれらに関する考察も見られるものの、これらはまだPDの議論には組み込まれていない。 むろんASDにおいては、否定的感情、離隔、制縛性などが関与し、CPTSDにおいては否定的感情、離隔などが顕著な特徴として表れている可能性があるが、臨床的な見地からはBPD傾向に加えてこれらのファクター(BPDかASDかCPTSDかの視点)を念頭に置いて見立てを行うことが勧められよう。  BPDかASDかCPTSDかを判断するという方針は治療を見据えたPDを知る上での一つの指標であると考えたい。それは何よりもこれらが昔で言う第一軸診断に関与しているからである。例えばある否定的感情や離隔、制縛性などが特徴な人に関して、その人がASDの診断基準を(少なくともある程度は)満たすことに気づかれた場合、その治療指針はより支持的で心理教育的な要素を持つことになるだろう。また過去のトラウマが存在し、否定的感情、離隔などが顕著な特徴とされる人の場合、その人がCPTSDを満たすことでよりトラウマに焦点づけられた治療が求められることになるだろう。


2025年12月29日月曜日

PDの精神療法 書き直し 7

 本号(●●の特集号)の中で、本章は「Ⅲ さまざまな精神疾患に対する精神療法」の第13番目として位置づけられる。扱う対象はパーソナリティ障害であるが、他章の統合失調症やパニック症、摂食症などと比較して、DSM-5に従っただけでも10の障害を含む大所帯であり、とても網羅的な解説をする余裕はない。そこでまずPDの精神療法についての概説を述べ、その後に境界パーソナリティ症、自己愛パーソナリティ症、発達障害および複雑性PTSDに限定して各論を論じることにしたい。(発達症および複雑性PTSDはパーソナリティ障害としては分類されないが、これらが本章で特筆すべき価値はあるものと考える。)

パーソナリティ障害の精神療法:概論 

見立てと診断

パーソナリティ障害(personality disorder, 以下PD)の分類に関しては、現在DSM-5(2013)の第Ⅰ部(本体部分)に示されたいわゆるカテゴリカルモデルと、DSM-5の第Ⅲ部及びICD-11(2022)に示されたディメンショナルモデルが並立して存在する。それぞれのモデルで提示されているPDの分類にはかなりの相違があるが、そのことが示すのはPDに関する概念上の混乱というよりは、そもそもPDの臨床的な表れが極めて多様性や流動性を帯び、その分類が容易ではないという現実を示していると言えよう。またPDを有すると考えられる患者の多くは併存症を有しているため、その治療目的や改善の表れを論じる事の難しさが加わる。 インテークでは、医師はその抱えている問題の全体像の把握を試みる。患者はそのPDにより自ら苦痛や社会的、職業的な困難さを抱えていることになる(DSM-5)。しかし実際に訪れる患者は「私には〇〇などのパーソナリティの問題がありまして・・・・」と訴えるわけではない。大抵は具体的な対人関係に悩まされているという事情や、周囲(主治医や家族)から受診を薦められた経緯を話すことから始まるが、自分が有している可能性のあるパーソナリティの問題には比較的無自覚である。そしてPDの全貌はこれまでのヒストリーで繰り返されているパターンから推察されたり、治療関係の中で再現されたり、家族や同僚などからの副次的な情報により初めて明らかになったりする。

2025年12月28日日曜日

PDの精神療法 書き直し 6

 CPTSD

CPTSDにおいてはいわゆる自己組織化の障害(Disturbance of Self-Organization、以下DSO)すなわち感情のコントロール困難、否定的な自己概念、対人関係の困難が診断基準として謡われている。これは患者の自己イメージ、感情、他者との関係性に関する障害を意味する。CPTSD自体はパーソナリティ障害とは分類されないが、患者はそれに近い傾向を備えているとみなすことが出来、またこれらのDSOの傾向はトラウマを経験した患者の多くが多かれ少なかれ示すものと考えられるために我が国に紹介されたものを二つ紹介しておく。
ピート・ウォーカーPete Walker は自身がCPTSDの体験を持ち、治療者としても長年このテーマに取り組んできた立場から、CPTSDは単なる「反応」ではなく、持続的な対人侵害や見捨てられ体験を反映した習慣性の反応として理解されるべきだとする。そしてCPTSDの典型的な特徴として、感情調整困難・自己価値の低下・対人関係での不安・羞恥・怒りの爆発などを挙げる。これはPTSDの標準的症状(再体験・回避・過覚醒)を超えて、人格や相互関係のあり方全体を変える影響を持つとする。ウォーカーは、CPTSDの回復において次のような要素を重視している。それは安全な治療関係(安全基地の提供), 感情フラッシュバックの理解と管理などである。またCPTSD特有の emotional flashbacks(感情的フラッシュバック)は、過去の関係パターンに侵されるように現在の生活に現れる。これを理解し、自覚→距離化→対応スキルへとつなげることが治療の中心となる。
ウォーカーはCPTSDの多くの問題を「アタッチメントの不全」と関連づけている。これは、幼少期の不安定なケア経験が人間関係の学習機会そのものを奪った影響として説明される。身体面や情動面への介入 ただ認知を変えるだけでなく、身体感覚・情動体験を統合し、自分自身を取り戻すプロセスが中核にある(実際のスキルとしてはジャーナリング、呼吸や緩和技法、情動ラベリング等が用いられる)。
Walker, P (2013) Complex PTSD: From Surviving to Thriving: A GUIDE AND MAP FOR RECOVERING FROM CHILDHOOD TRAUMA. CreateSpace Independent Publishing Platform. 牧野 有可里,池島良子訳 複雑性PTSD(2023) 生き残ることから生き抜くことへ 星和書店.

アリエル・シュワルツ(Arielle Schwartz)はCPTSDに対する統合的・身体と心をつなぐ治療モデルを提示している。彼女は複数の治療技法を組み合わせた マインドボディアプローチを提案する。 シュワルツのアプローチは、CPTSDをただ認知の問題としてではなく、身体の反応と精神の連動として治療することに重きを置く点が特徴的である。トラウマは単に思考や感情の問題ではなく、自律神経や身体感覚に刻まれているという立場から、マインドフルネス、ポリヴェーガル理論の応用、身体介入などを統合する。
Schwartz,A (2021)  The Complex PTSD Treatment Manual: An Integrative, Mind-Body Approach to Trauma Recovery, Pesi. (野坂 祐子訳(2022)複雑性PTSDの理解と回復ー子ども時代のトラウマを癒すコンパッションとセルフケア 金剛出版)