2024年12月7日土曜日

男性の性加害性 推敲 3

   しかし、である。私は一つの事実を知って混乱してしまった。性加害者のごく一部しか「性依存」の基準を満たしていないというのである。それは欧米の疫学研究が明らかにしていることだ。最初は加害者の50パーセントがこれに該当するとか考えられていたのに、実は十数パーセントだという。私はこれまでは男性の性加害の大きな特徴は、男性が自らを止められないことが原因ではないかと考えていた。しかしそのような原因がごく一部だとすると、「嗜癖は男性の言い訳」という主張は案外その通りだということになってしまう(Efrati, Y et al,2019)。私の考えが誤りだった可能性がある。

この問題から何かを直ちに結論付けることはできないので、すこし保留しておこう。ただし次のようなことは言えないか。確信犯的な性犯罪を起こす男性は、それを自らが選択し、意図的に罪を犯すのだろう。他方では自らを止められない男性が数多くの犯罪未満の加害行為を行っているという可能性はないだろうか。

Efrati Y, Shukron O, Epstein R. Compulsive sexual behavior and sexual offending: Differences in cognitive schemas, sensation seeking, and impulsivity. J Behav Addict. 2019 Sep 1;8(3):432-441. 

男性は存在するだけで加害的?

少し別の角度から論じてみよう。男性の少なくとも一部は、その存在そのものにより既に加害性を負っているという感覚を持つであろう。これはちょうど女性が男性を見るとそこに潜在的な加害者像を投影するというのと表裏の関係にあるかもしれない。
どこかのビーチでスマホ(ビデオカメラだったかもしれない)で録画をしていた男性が盗撮の疑いをかけられたという話を聞いた。あるいは電車で向かい側に座っている女性を携帯で写したところ、その女性の男性のパートナーに糾弾されたというような話も聞いたことがある。一昔前なら考えられなかったことだ。