2024年6月23日日曜日

PDの臨床教育 推敲 5

 なおDSM-5代替案とICD-11でPDがあるかないか、という診断は、当然のことながらモノセティックにおこなう。まずPDがある、とは自己のいくつかの側面の機能 functioning of aspects of the self と対人機能 interpersonal function に障害がある事だ。自己機能の障害とは、自分とはだれか、と言うアイデンティティの感覚。自分を肯定している。将来に向かった志向性を持っている、ということだ。また対人機能の障害は、他者と親密な関係を持ち、他者を理解し、対立に首尾よく対処できるということだ。

 さてDSMだと片方だけでもいいことになっている。「自己または対人関係」となっている。ICD-11もどちらか一方でもいいとされる。どちらでもいい、と言うよりはどちらか一方があればすでにPDとする、と言うべきか。そしてその障害がDSMだと中等度以上、ということになる。ICDだとこれが軽度、中等度、重度と3段階になっていて、それ+一つ以上の特性の問題がなくてはならない。またICDだと、軽度以下の場合は「パーソナリティの問題 personality difficulty」と表記し、それを問題とはしない。

ここで気がついたのだが、CPTSDに出てくる自己組織化の障害(DSO)は、結局実質上パーソナリティ障害のことを言っているということだ。なぜならこのCPTSDの 自己組織化の障害(DSOの部分)とは、 情動の調整不全、 否定的な自己イメージ、関係性の障害 であるが、それはパーソナリティ障害のディメンショナルモデル(DSM-5第3部、ICD-11) におけるパーソナリティ機能の障害にほぼ相当する。

上にも述べたように、パーソナリティ機能(DSM-5,ICD-11)とは自己機能(確かなアイデンティティ、自尊心の安定性など)の障害かまたは対人関係機能(他者と親密な関係を持つ力、など)の障害だからである。