2024年6月1日土曜日

「トラウマ本」男性のトラウマ性 加筆訂正部分 3

 男性は不感症という議論

 さてこの問題に関して、森岡正博氏の議論を少し紹介したい。森岡(2004)の「感じない男」はユニークな書であり、上に述べたような男性の性愛性について、結局それが男性の不感症のせいであるという結論に至っている。

 彼は男性にとっての性的興奮の高まりは、その行為が終わることで一挙に消えてしまい、その快感の程度は極めて低いという点を指摘する。つまり射精と共に男性の性的興奮は突然消失し、またその際の性的な快感も女性に比べればはるかに低いと主張する。
 それに比べて女性ははるかに強くまた継続的な快感を体験する。また男性の様にクライマックスに達した後に一挙に消え去るという事も生じない。男性はこのことに対して羨望の念を持つ。そしてこの羨望が男性の女性に対する攻撃性として表れることがある、とする。
 森岡の説は男性の側からその性的な体験について赤裸々に論じたという意味でも非常に画期的であるといえる。ただし私自身はこの理論に必ずしも賛意を向けられないところもある。特に男性の女性に対する羨望という点は、そのような気持ちを体験する人もいるかもしれないが、一般化は出来ないのではないかと思う。男性の性愛性の含む暴力性はさらに複雑な要素が絡んでいるように思えるのである。

ただし森岡の論点のある側面は、私が以下に述べる嗜癖モデルにも通じ、その意味では大いに参考すべき点も多いと考える。