2022年7月1日金曜日

パーソナリティ障害 概論 4

 ギャバードの述べる9か条( )内に私自身の短いコメントを入れる。これはBPDの治療だけでなく、パーソナリティ障害一般に言えることであろう。

柔軟性を保持すること。(岡野の「治療的柔構造」に相当する)
精神療法を実行するための条件を確立すること。(外部資源を用いた安定性、すなわち治療構造を確立すること)
受け身的なスタンスを回避すること。(治療者は受け身的なままにとどまらず、積極的に患者が見ようとしていないものに目を向けることを促す)
悪い対象への変形を許容すること。Allow transformation into the bad object. (患者は器質的に少しのトリガーにより反応しやすいところがある。BPDの患者は”bad-enough” object 「程悪い」対象を求めていて、治療者は成人君主のままでいたいという願望を放棄する必要がある。)
怒りの奥にある痛みに共感すること(患者からの挑発に怒りで返すことは、BPDの患者さんの繰り返した対象関係に加担することになる。その背後にある傷付きに注目すべきである。従来の考え方では、患者が本来有する攻撃性の解釈が有効であるとされるが、これには例外がある。特にトラウマを受けた患者さんの場合はその傷がいえることが第一の目標となる。)
メンタライゼーションを促進すること。(ギャバードさんによれば、そのために患者さんの治療者に対する挑発的な言動について、それを詳しく尋ねるという例を挙げている。)
必要な時に限界設定を行うこと。
患者が否定したり他者に投影したりした自己の側面を再び所有できるよう患者を援助すること。
治療同盟を確立し、維持すること。(これが非常に大事である。いかに治療関係が危うくなっても、基本にある関係性が重要である、ということだが、逆に言えば治療同盟が確立できる患者さんほど治療の可能性が高いということか?)
逆転移感情をモニターすること。(ただしもちろんこれが常に可能だということは保証されない。)