2018年9月8日土曜日

自主シンポ「マイクル・バリント再考」

 週遅れで学会記である。8月31日に、神戸の心理臨床学会のH沢先生のグループの自主シンポにお誘いを受けて討論者として参加した。テーマは「バリント再考」だが、ではどこかで一度「考」しているのか、というとそう言うわけでもないということがネタになっていた。ということでH沢先生、H野先生、T井先生のバリントについてのお話を聞き、大変参考になった。そして改めてバリントが好きになった。
ところで今回は久しぶりに彼の「治療論から見た退行」を紐解いた。(といってもPDFで保存してあるので、「スワイプした」が正しい。もう30年以上前、渡米前に買った本だ。)改めて読むと、土居健郎先生や中井久夫先生の前書きや訳者あとがきに味がある。土居先生は自分は内向的だから、バリントと文通していても積極的になれなかった、などと書いてある。(そうだったのか、先生は内向的だったんだ!)中井先生はあとがきで、バリントが米国オハイオ州のシンシナチ大学に一時期客員教授で滞在していたと書いてあるが、それでどうして「治療論から見た退行」(原題 Basic Fault) の1992年の版に、コフート派のポール・オーンシュタインが序文を書いているかがわかった。(シンシナチ在住だったから二人に親交ができたのだろう。「ちょっと君、書いてくれない?結構話が合うし。」とかいう会話があったのだろうか。)
 ともかくも学会の話。私の討論の結論としては、H沢グループの皆さんもバリントも一種の反骨精神を持ち、精神分析を実際の臨床にとって役だてようとしているのではないか、という理解にいたった。その意味では反精神分析的な姿勢をお持ちだという話の中井先生も、土居先生までも反骨的なところをお持ちということになろう。H沢グループのバリントの解説書(Harold Stewart 著)の日本語訳ももうすぐ発売だという。