2012年7月4日水曜日

続・脳科学と心の臨床(39)

 解離現象による人格の生成は、意識の生まれる素地として何が必要かを示唆している。それはニューラルネットワークそのものと言ってもいいであろう。ニューラルネットワークとは、神経細胞(ニューロン)とその間をつながる神経線維により形成される網目である。脳は巨大なニューラルネットワークといえるが、おそらくそれはいくつかのサブ・ネットワークに別れる可能性がある。例えば私たちは右脳と左脳のそれぞれが意識を持ちうることを示唆したが、それが一つの例である。実際には左右にはっきり分かれはしなくともいくつかのパターンが存在し、それぞれが意識を持ちうるのであろう。

 考えてみよう。ネズミは意識を持つであろうか?おそらく。私たちが持つ意識ほど洗練されてはいないにしても「自分」という感覚はあるであろう。そしてそれを構成しているのは、おそらく人間に比べて極めて少数のニューロンからなる神経ネットワークなのである。ということは意識は私たちの持つ何十億ともいわれるニューロンのほんの一部からなるネットワークによっても成立するのである。人間の脳のキャパシティーから言ったら、多数の意識が存在していてもおかしくない。
 ところでニューラルネットワークと言ってもその実体に関してピンとこない人は多いであろう。以下の図は、ネットで得られる脳の配線のマップである。


(引用元 ttp://www.swissinfo.ch/eng/Home/Archive/Scientists_map_brains_wiring_diagram.html?cid=75776


この図は脳を上から見たところで、皮質から様々な部分に向かって配線が形作られている。そのより立体的な様子についても次のような画像が参考になる。これは脳を側面から見たものだ。



(引用元 http://www.newscientist.com/gallery/mg20527535-500-slow-thinking
これらのイメージを見てますます混乱する方もいるだろう。ただしこう考えて欲しい。ある思考や感情からなる体験は、これらのネットワークの一部を構成する神経ネットワークのパターンであるということだ。