2026年4月30日木曜日

甘えの相互性 7

 素直な甘えと屈折した甘え

 ところで「甘える⇔甘えさせる」が同時に「甘えてあげる ⇔ 甘えてもらう」となるという関係は、いわゆる「素直な甘え」という土居の概念に近いことがわかる。土居は1987年にモントリオールで開かれた国際分析学会の発表(Doi,1989)で、素直な甘え(primitive amae) と屈折した甘え(convoluted amae) の分類に関して述べている。前者は子供らしく、無垢でrestful であり、後者は子供じみて、意図的で、要求がましいとする。土居はこの二つの区別を非常にシンプルに、甘えを受け入れてくれる側 willing recipient が明確に存在する場合と、それが明確でない場合という違いに見出す。つまり素直な甘えとは、甘えの相互性が自然に成立している状態で、甘える側は相手がそれを心地よいと感じていることを想定している。すなわち素直な甘えとは、両者が心地よさを味わうことで維持される。さもなければ甘えられた方は迷惑でしかないので長続きしないであろう。
 ここに述べている素直な甘えの関係については、小此木(1968) の甘えの定義にちょうど合致している。小此木は甘えの定義として「自己の依存が同時に相手の喜びであるとの期待とその確認を含む相互的な対人交流」としている。