2025年10月26日日曜日

解離症の精神療法 推敲の推敲 4

   ● 入院治療

DIDの患者の診断的な理解が不十分な段階では、時として生じる頻繁な自傷行為や解離状態での行動化のためにパーソナリティ症や精神病が疑われ、危機介入の意味で緊急入院となることがある。しかしその場合には入院後には解離症状が治まるとともに平静さを取り戻し、早期に退院となることが多い。しかし抑うつ症状に伴う自傷行為や自殺傾向が強まった場合、ないしは再外傷体験に伴う人格の交代が頻繁に生じて本人の混乱が著しい場合などには、一時的な入院治療の必要が生じるであろう。入院の目的としては、患者の安全を確保し、現在の症状の不安定化を招いている事態(たとえば家族間の葛藤、深刻な喪失体験など)があればそれを同定して改善を図ることなどが挙げられる。
 外来治療においては情緒的に不安定であったり深刻なトラウマを抱えている人格については十分にそれらを扱う余裕がないという問題が生じることがある。しかし比較的長期の入院が可能であれば、病棟による安全性も確保されることで、それらの問題を扱うことが可能になるかもしれない。
 ただし解離症の入院治療は解離症の理解やその治療の特異性を踏まえた看護スタッフの存在が不可欠であり、さもなければ入院治療がさらなるトラウマ体験となってしまう可能性も否定できない。

3.DFの治療プロセス


<以下省略>