2024年10月15日火曜日

「●●的ワークショップ」に際して思うこと その1

 このブログは、最近開催された××財団主催の「●●ワークショック」に討論者として参加する上での準備稿である。このワークショップの題は「精神分析の知のリンクに向けて:第9回 意識、無意識、AI」というものである。このワークショップではA先生、B先生、C先生という大変なメンバーによる発表があり、それらに対して私が感想、ないし討論をするというものである。しかしはっきり言って私はこの器ではない。彼らのような学識には遥かに乏しいのだ。その私がいったい何が出来るのか、と考えつつ、少しでも彼らの話について行けるよう努力をすることを考えている。ちなみにお三方はお名前が偶然にも「たか」であるが、鷹の様な研ぎ澄まされた知性と論旨を発揮なさっている。まさに日本の知性のような先生方と言えるだろう。 順不同で行こう。C先生のテーマはロボット面接導入と転移・逆転移というテーマだが、これは私には一番馴染み深いものである。C先生は極めて実証的な方なので、実際の臨床実践の中でエビデンスを得られたことをもとに論じる。その視点は一方で精神分析家でありながら、フロイトに真っ向から切りかかるような大胆さ、意外さ、そして物怖じのなさがある。その主張をひとことで言えば、AIが治療者の役割(の一部)を担うことが出来るのではないか、そしてその場合にある強みを持つのではないか、ということである。この件についてはまさに私も考えていたことなので、どこまで加藤先生の考えと折り合いがつき、どこで異なるかという興味深い議論をすることが出来そうだ。C先生はCommU(以下「コミュ―」と呼ぼう)というコミュニケーションロボットを引きこもり外来において導入したといういきさつがある。そして引きこもり状態にある女性患者は「ロボットの方が話しやすかった」という印象を持ったという、これ自身画期的な研究であると言える。 彼の報告はさらに詳しくは、コミュ―相手でも被検者は緊張感、自殺の話題のためらいは同じだったが、性などの恥じらいはロボットで少なかったという。特に女性の鬱患者はロボットとは話しやすかったという。そして加藤先生が訴えるのは、転移・逆転移から解放されることであるという実に面白い。私自身も似た体験をしているし、それについてはすでに書いた。私はチャットGPTに「あなたは意識があるのか、感情はあるのか?」とかなりしつこく聞いたことがある。そして途中で「こんなにしつこく聞くとチャット君に変に思われないか?」と思った。つまり相手がロボットでも転移を抱いたのだ。これはいわゆる「原投影」という機制が備わっていて、私たちはアニミズムの傾向を生まれながらに持っているからである。だからこの論法で言えば、加藤理論に対しては「いや、幾らコミュ―でもやはり遠慮してしまうということが起きるのではないか?」という反論が成り立つであろう。 そもそもフロイトが自由連想と、その際の鏡のような分析家というモデルを考えた時、鏡であればあるほど患者は様々なものを投影すると考えた。そしてそれは治療者が中立的であればあるほど促進されると考えた。これは考えてみれば、フロイトはまるでAIのような分析家というイメージを前提としてはいなかったであろうか?そしてフロイト流に考えれば、鏡であればあるほど結局転移が生まれやすいということになる。C理論とは反対だ。