2024年7月26日金曜日

PDの臨床教育 何が「推敲の推敲の推敲」だ!

原稿を仕上げていく中で、次々とわかっていないことが判明してきた。つまり文章を整えるために知らないことが次々と出てくる。こんな文章を付け加えることになりそうだ。いつになったら完成する事やら…・・

 なおICD-11ではこのようなディメンショナルモデルが全面的に展開されているものの、DSM-5の代替案ではカテゴリカルモデルと入り混じって一見込み入った複雑なモデル(いわゆるハイブリッドモデル)となっている。これは両モデルのそれぞれの支持者の間の妥協形成が反映されていて、そこではあたかも10のカテゴリーのうち6つ(すなわち反社会性、回避性、境界性、自己愛性、強迫性、統合失調型PD)が復活したかのようである(※)。これらは虐待やネグレクトとの関連、機能障害の重度ないし持続性、自殺リスクの高さなどの観点から選ばれ、「落選」したのは4つ(猜疑性、シゾイド、演技性、依存性)ということになる。 これらはカテゴリーモデルの復活と見なされかねないが、その診断基準としてはこれまでと一変し、パーソナリティ機能とパーソナリティ特性の両方の障害の基準を満たすことが求められている。そしてこれらを満たさない場合は、「PD,特性が特定されるもの」と診断される。 ではハイブリッドモデルでは、結局カテゴリカルな診断と表面上変わらないのでは、という疑問も呈されるかもしれない。確かに境界PDは境界PDであるが、そこにパーソナリティ機能と特性に関する情報を特定用語として追加できる。例えば「境界性PD,重度のパーソナリティ機能、診断基準に含まれる特性以外に虚偽性、注意喚起を持つもの」となるという。これって複雑すぎはしないだろうか。 (DSM-5を読み解く 5 井上弘寿、加藤敏 p127)
  ※ 2010年のDSM-5ではパーソナリティ機能、パーソナリティ障害タイプ(反社会性/精神病質、回避性、境界性、強迫性、統合失調型)、パーソナリティ特性の3つのディメンションを用いたものだったが、後に自己愛性が加わったという経緯がある。この時点ではジェネリックなPDがあるなし、という診断だったので重複の問題はなかったという。しかしこれが煩雑だという批判があり、2011年にはカテゴリカルな診断基準が復活し、また自己愛性も復活してタイプは6つとなり、ハイブリッドモデルが完成した。