2024年2月8日木曜日

トラウマと心身問題 4

  最後に現代における心身問題について、総括をしたい。MUSをいかに扱うかは、時代を超えた問題であるという私の話の出だしの意味はある程度説明できたであろうか。

 まずMUSはいまだに現代社会におけるヒステリーの意味を担っているということである。そしてMUSに含まれる疾患は医学研究と共に入れ替わっていくという性質を持つという事実を示した。それは最終的な以下の図に示されるであろう。

次にDSM-5、ICD-11において心因や転換性という概念が消えていく傾向にあり、それは「MUSイコール心因性、心の病」という誤解を解き、「脱ヒステリー化」を推進するものと思われる。

 その結果として、今後MUSを示す患者は、心の病として精神科に回されるのではなく、症状の存在を認め、それに応じた治療(対症療法)を施されるべきではないか。これは欧米の文献を見ると一目瞭然である。MUSに属するような疾患を身体の専門科と精神科とが同時に扱うべきであるという議論が非常に多く聞かれる。

 更に示したのは、欧米において最近見られるのは、MUSは今後身体科と精神科が歩調を合わせて治療が行われる傾向である。従来は身体科と精神科の「押し付け合い」が多くみられていたが、その様な傾向に対する反省が起きているのだ。

ただ私は我が国はこの問題において一歩先んじていると考える。それは日本独特の診療科である心療内科である。今後のMUSの治療の場はこの心療内科が担っていくべきであると私は考える。