2022年8月27日土曜日

不安の精神病理学 推敲 17

  フロイトが不安について語りだしたのは、精神分析を確立する前の話だ。1895年の「『不安神経症』という特定症候群を神経衰弱から分離する理由について」で不安について論じた。そして彼自身が、E.Hecker 1893)、Kaan (1893) によって概念化されているとする。そこで彼は全般的な焦燥感general irritability 不安な予期 anxious expectation などの分類を行っている。
 フロイトの原文を追っていくと(フロイトの著作をすべて一本にした例のデータ,全3881ページ)を使っている。これをFと表記しよう)フロイトは神経衰弱NAについてとても頻繁に言及している。最初の言及は1895年の「ヒステリー研究」だが、NAの記述は単調で、心的な要素が何もない、と不満を言っている。そしてこのNAから不安神経症を切り離すべきだと書いてある。(F190)そしてしょっぱなから、性的な起源をもつ生理的緊張の蓄積 an accumulation of physical tension (of sexual origin)と言っているのだ。ただ面白いのは精神医学では当時は一番近い概念がこの身体症状の記述ばかりのNAの概念であったということである。
 そしてこうも言うのだ。NAと不安神経症はしばしば混在する。(F191)そもそも1895年の彼の論文の題がそのことに関するものだ。「『不安神経症』として記述される特定の症候群を神経衰弱から切り離す根拠について」そしてそこに混在する不安神経症は全く異なる起源を有するという。そしてこんなことも言っている。「NAは十分な活動が不十分な活動、つまり最も好ましい形での性交ではなく、マスターベーションや夢精に置き換わった場合に生じる。」(F271
 つまりはBeard により概念化されたBAはフロイトの手により、これもまた性的な起源をもつものとされてしまったのだ。