2025年12月6日土曜日

PDの精神療法 2

  まず最近盛んに論じられているCPTSDについての心理療法的アプローチについて論じる。CPTSDは独特のパーソナリティ傾向(複雑な対人関係の歪み、アイデンティティの揺らぎ、自己価値の低下、情動不安定性 )があり、この治療も一種のパーソナリティ障害の治療というニュアンスがある。そして重要なのは、これらのDSOの項目に組み込まれるような問題は、しばしばBPDやNPDにもみられることが多いということだ。

 CPTSDに対する治療はもっぱらトラウマに焦点づけられたものが多い。そのいくつかの例を挙げよう。以下はAI情報を使ったまとめ。

トラウマ焦点型セラピー(Trauma‑focused therapy)(トラウマ焦点 CBT, EMDR, プロロングド・エクスポージャー(PE) など)過去のトラウマ記憶を処理・統合することを中心に据える。EMDR や PE など、身体的・知覚的側面を伴う場合も多い。 CPTSD の PTSD 症状および関連不適応 (過覚醒・フラッシュバックなど) に対するエビデンスあり。特にある研究では、8日間の集中的トラウマ焦点治療で、CPTSD 診断を喪失した例も報告されている。ただし、CPTSD 特有の「自己組織化の障害 (disturbances in self-organization, DSO)」 — 自己感の混乱、対人関係の困難、情動調整障害など — に対する治療は限られている、という系統的レビューもある。

統合的・エクレクティックなアプローチ (integrative / multimodal therapy)

トラウマ焦点療法、身体志向セラピー (somatic therapy)、ナラティヴ療法、スキルトレーニングなどを柔軟に組み合わせる。コンディションや患者の状態に応じて適宜構成を変える。 CPTSD のような複雑かつ多面的な心的傷害には、単一モデルでは不十分。柔軟性・適応性が高く、個別化された治療が可能。

身体志向・マインドボディ療法 / 身体感覚の再統合 / マインドフルネスなど

心理的トラウマが身体に刻まれるという観点から、身体感覚・自律神経・内受容 (interoception) に働きかける。マインドフルネス、身体ワーク、感覚統合などを含む。心と身体の分離 (心身二元論) を超えて、トラウマの「身体的記憶」を扱う点で、特にトラウマの深刻なケースや解離傾向が強いケースに有効。最近はこうしたアプローチの重要性がますます注目されている。 

全体として言えることは、多くの研究では “PTSD と CPTSD の混合サンプル” や “トラウマ全般” が対象で、「CPTSD 特有の DSO (自己組織化障害) に特化した治療効果」のデータはまだ十分とは言えない。 ということである。また、エビデンスの質、追跡期間、効果の持続性、再発防止などについてはまだ課題がある。特に解離や対人関係の根深いゆらぎ、アイデンティティの問題などに関しては、長期的な観察・検証が必要であろう。