2024年5月16日木曜日

CPTSDと解離 3

このテーマに関して二つの論文の抄録を読んでまとめてみた。

Hamer R, Bestel N, Mackelprang JL. Dissociative Symptoms in Complex Posttraumatic Stress Disorder: A Systematic Review. J Trauma Dissociation. 2024 Mar-Apr;25(2):232-247.

ICD-11にCPTSDが掲載された。しかしCPTSDの評価の際にどのように解離が関係しているかについては明らかにはされていない。そもそも解離とCPTSDの関係性自体が不明である。この問題に関する17の論文を検討した。CPTSDの程度を推し量るうえで最も頻繁に用いられているのが、ITQである。また解離症状の程度を評価するのに用いられる尺度は12あり、その中でももっともよく用いられるのが、DSS(Dissociative Symptoms Scale)とDESである。それによるとCPTSDと解離の相関は中等度 moderate ~強度 strongであるが、研究にばらつきも見られる。CPTSDにおける解離の程度を決定する上で最適な尺度を見極めなくてはならない。


Hyland P, Shevlin M, Fyvie C, Cloitre M, Karatzias T. The relationship

between ICD-11 PTSD, complex PTSD and dissociative experiences. J

Trauma Dissociation. 2020 Jan-Feb;21(1):62-72.


本研究は英国において深刻なトラウマを経験し、トラウマ的なストレスと解離体験に関する尺度を記入してもらった患者106人の患者である。大部分(69.1%)がCPTSDの診断基準を満たした。CPTSDの基準を満たす患者は、PTSDのみないしは診断のつかない患者に比べて、より高い解離傾向を示した。(Cohen's d がそれぞれ 1.04 と1.44)CPTSDの3つの症状クラスターが多変数的に解離と関連していた。それらは「感情調節不能 Affective Dysregulation」 (β = .33)と「今ここでの再体験 Re-experiencing in the here and now」 (β = .24)と「 関係性の障害 Disturbed Relationships」 (β = .22)であった。解離がCPTSDのリスク要因なのか、あるいはその結果なのかを知るためには縦断的な研究が必要になろう。