2023年8月4日金曜日

連載エッセイ 7の4 機能的な分離脳の概念

 分離脳に関する最近の研究について探しているうちに、「機能性分離脳 functional disconnection syndrome」という概念をネットでよく見かけることに気が付いた。つまり分離脳が脳梁の切断などにより起きているのではなく、機能的に起きている。これはもっとわかりやすく言えば、それらの間の連絡が不安定だったり、不十分だったりするということらしい。そしてそれが神経発達障害のような状態で起きているのではないかという仮説が見えるのである。すなわち「脳のアンバランス brain imbalance 」ということだ。米国人がよく口語で使っている 「化学的なアンバランス chemical imbalance」という表現を彷彿とさせる表現だ。こちらの方は、「私は普通に悩んでいるだけなのに、どうしてお薬が必要なのですか?」と言われた場合に、「それは頭の中で化学的なアンバランスが起きているからだよ」という形で正当化するときに便利な表現だ。何しろ「ケミカルインバランス」という表現を一般人はみな聞いたことがあるので、「つまり心の中で起きていることは、脳の中のどこかの異常に対応する、というわけね」という理屈を言葉のレベルで皆受け入れているということになるからだ。」

この概念の始まりは以下のようだ。In 1977, Witleson reported[6] that developmental dyslexia may be associated with (i) bi-hemisphere representation of spatial functions, in contrast to the unitary right hemisphere control of these functions observed in normal individuals.

1977年にウィテルソンという学者が読字障害は空間認知の機能が左右脳に及んでいるということを発見したという。通常は右脳が主としてそれを処理するのに比べた特徴だとしたのである。つまり空間認知に左脳まで使われてしまうことで、左脳が特化した言語学的な認知プロセスを行うことを阻害するというわけだ。
 ということで左右脳の不釣り合い状態がどうやって発達障害の問題に結び付くのだろうか。あるサイトでは、これにより生じる障害のリストを挙げている。https://www.carolinabraincenter.com/what-is-functional-disconnection-syndrome/#:~:text=Functional%20disconnection%20syndrome%20is%20where,communicate%2C%20and%20share%20information%20appropriately.

それらは不注意、衝動性、不安、情報処理が遅いこと、所持障害、社会的な付き合いの苦手さ、非言語的なキューを拾うことの困難さ、人の気持ちの読めなさ・・・・。ひとことで発達障害的な問題といえそうで言えなさそうな感じだ。ちなみにこれは「キャロライナ脳センター」のサイトであり、ノースキャロライナ州の機関が研究をリードしている感じだ。そして治療手段としては、半球同士の統合と同期化を行うという。これをしない限り、弱い方はますます弱くなり、左右のインバランスが悪化する、と書いてある。そして最初のアセスメントで、例えば聴覚の脆弱さが見つかった場合は、それを促進するという。