2022年12月2日金曜日

脳科学と精神療法 デフォルトモード 3

  デフォルトモードの特徴を一言で表すなら、それは「待ちの態勢」ということになる。脳にある種のコマンドを出して出力を待つ。私達はそういう時目を閉じて下を向く。あるいは目を宙に泳がす。視界に特定の刺激を与えないように、何もない壁に目をやったりするが、私たちはその時何も「見て」はいない。たとえて言えば、骰子を転がしてどの目が出るかを目を閉じて待っている状態だろうか。あるいは検索エンジンにキーワードを入れてエンターキーを押して答えを待っている時のPCの状態だろうか。あるいは作曲をしている時、句をひねっている時、もう少しで思い出しそうなタレントの名前を一生懸命探している時。

 私たちがこの待ちの態勢の時に行うことは、外界からの刺激を遮断すること。余計な情報を与えることでデフォルトモードを邪魔しないようにすることだ。これはタスクをこなしているということではない。タスクというのは、100から7を何度かひいて言ってください、というような作業だ。(いや、しかしこれだってデフォルトが機能している可能性がある。100から7をひくとき、私達は一つ一つ数をひいていくのではない。経験から100引く7は93とわかる。その時は一瞬であれ私たちはデフォルトを使うのかもしれない。ということはタスクとは、短いデフォルトをつなぎ合わせる作業と言えるだろうか?するともっと典型的なタスクとは、外からの刺激に応答しているという時だろうか。例えば授業を聞いてノートを取っているとき。私たちは意識を特定の知覚入力に集中させる。

このような待ちの態勢を「臨界状態」になぞらえることが出来る。臨界とはある相から別の相に相転移をしかかっている状態である。ウィキ様を参照すると次のように書いてある。

「一般に境、境界を意味し、物理学では物質の物理的性質が異なる境界をさす用語として用いられる。とくに原子炉核燃料について、核分裂反応が時間とともに増大し始める境目の状態、中性子生成と消滅が均衡している状態を臨界あるいは臨界状態という。」

ある状態になりそうでならないぎりぎりの状態と言っていいだろうか。