2021年4月7日水曜日

解離性健忘 2

 DSMのテキストだから直すところなどないだろうと思っていたら、結構全編書き直しのようになって、やっていて面白いことが分かった。

診断的特徴

解離性健忘はその健忘に解離の機制が関与しているものであり、基本的にはその人の心の一部に記憶内容が隔離された状態で保存されているという前提がある。その生成には基本的に二種類が考えられる。それはその出来事の最中に人格の解離が生じた場合と、その最中にトランス状態や解離性の昏迷状態になった場合である。前者の場合はその時出現した人格状態での記銘が行われることになるが、後者の場合海馬が強く抑制されることで、自伝的記憶部分については記銘自体が損なわれることにもなりうる。するとその出来事のうち情緒的な部分のみが心に刻印される、いわゆるトラウマ記憶の生成が起きる。後者の場合その自伝的な部分は記銘そのものが損なわれている可能性があり、のちの想起も難しくなる。

DSM5ではこれを限局性健忘、選択的健忘、全般性健忘、系統的健忘に分類する。

限局性健忘,限定された期間に生じた出来事が思い出せないという、解離性健忘では最も一般的な形態である。通常は一つの外傷的な出来事が健忘の対象となるが、児童虐待や激しい戦闘体験、長期間の監禁のような場合にはそれが数力月または数年間の健忘を起こすことがある。