2014年4月3日木曜日

続・解離の治療論(20)


 
黒幕人格をどうするのか?


子どもの人格の次に私が論じたいのは、DIDにおいて攻撃性や怒りを表現する役回りを演じる人格についてである。私はそのような人格を「黒幕人格」と表現することにする。私がこの「黒幕人格」という言葉を使うのは、一つにはDIDの方々の多くが持つこの種の人格に余計な刺激を与えたくないからである。私は彼らを怒らせたくないし、挑発する意図は毛頭ない。ただ臨床的に非常に興味を持つのである。また彼(女)立ちのパワーには驚くばかりである。その意味で「黒幕」という表現を用いるのである。

黒幕さんたちは多くの場合、名前を持たないか、あるいは名乗ろうとはしない。精神科医やカウンセラーに対しては拒絶的で、積極的にコミュニケーションをとろうとはしない。しばしば厭世的で攻撃的だ。ある黒幕さんは、主人格の体を切り刻み、血を流すことに興味を覚える。あるいは薬の大量服用を繰り返す。それはあたかも黒幕さんが自分たちの(少なくとも身体レベルでの)消滅を本気で願っているかのようである。彼らは主人格が命を失うことで、自分たちの存在も同時に消滅するということに思いを致さないわけではないようだ。しかし彼らがあまりに遠征的で投げやりなため、彼らに対して「主人格をいじめることは、自分の首を絞めることにもなりますよ。」というたぐいの説得は意味を成さないことが多い。「どうせ死んだって構わない」という答えが返ってくるのが関の山である。