2013年5月5日日曜日

DSM-5とボーダーライン(7)



私は昨日のブログを書いた後、ちょっとショックを受けている。DSM-5は果たして「改良」されたのだろうか?臨床家のために、そして研究者のために改良された診断基準が、あんなに分厚いものになり、読んで理解する気さえ起きない形になるなんて。Windows 78になった時のショックより大きい。どこが「改良」なんだろう?第一言葉がわかりにくい。Negative affectivityネガティブアフェクティビティってなんだ?negative affect 陰性感情ならよく聞くが。 Self-directionとは(一応「自己の方向性」と訳してはいるが)?アメリカ人は読んで意味が分かるのだろうか?
DSM-IVBPDの診断基準は不評であったと聞く。その理由としてはすでにこのブログでも取り上げた。内容が均一ではない。9つのクライテリアのうち5つが満たされる方法は256通り出てしまうという。それにその正確に一定した部分と、ストレスにより急変して表面に出る病理とが混在している点も問題であるという。とにかくそれが次元モデルに変更せよ!という大きな動きになったということらしい。でもその結果としてあんなにややこしいことになっている。

そのややこしさの一つは、おそらくBPDに限ったことではないらしい。そもそもパーソナリティ障害(PD)一般とは何か、というので次のような提案がなされたという。まずはPDとして、パーソナリティ機能と、パーソナリティ傾向traits に分ける。パーソナリティ機能についてはさらに、自己selfの障害と、対人関係Interpersonalの障害に分ける。自己の障害としては、アイデンティティとSelf-direction(先ほどの自己の方向性、「何じゃこりゃー」である。)
また対人関係については、共感empathy、親密さintimacy、に分けられる。もうちょっと簡単に言えば、パーソナリティ機能とは、アイデンティティ、自己の方向性、共感、親密さの4ッつがどのように問題なのか、ということなのだ。
もっと言い代えるぞ。パーソナリティ機能とは、自分という感覚が安定しているか、将来をどのように志向しているか、他人に共感できるか、他人と近しい関係が持てるか、の4つがどのように障害されているか、である。この4つについてそれぞれのPDに関して項目が建てられるから、何か複雑な感じがする、ということか。
次はパーソナリティ傾向の方だ。これについては、4つある。陰性感情傾向 Negative Affectivity、疎遠さDetachment、敵対性 Antagonism 脱抑制 Disinhibition 精神病性Psychotismつだ。これって例の「ビッグファイヴ」と感じが似ているぞ。どっちも5つだし。でもよく見ると違うか。(種明かしは明日。)