実はそろそろまとめに入ろうと思っていたところだった。と言うの文字数からして5000字を超えていたからである(リクエストは6000字)。ところが次の文献を発見してしまった。
Milrod, B.L. & Busch, F.N. eds. (1997) Manual of Panic-Focused Psychodynamic Psychotherapy. Amer Psychiatric Pub Inc.
Busch とMilrod によるパニック障害の力動的治療のマニュアルだ。出版は1997年でかなり古いが、今書いているこの論文にとっては絶対欠かせない文献。しかしアマゾンで購入すると一万円以上する。さいわいこれに関する同じ著者による論文が2013年に出されていて、open access で手に入る! したがってしばらくこれを読むしかない。
Busch, F. N., & Milrod, B. L. (2013). Panic-Focused Psychodynamic Psychotherapy–Extended Range. Psychoanalytic Inquiry, 33(6), 584–594.
ところで1997年にこの著書が出された背景としては、パニック障害はCBTと薬物療法が主たる治療手段になっていたが、やはりすぐぶり返してしまうので、本当に治療するためには力動的な治療が必要であるということが上げられるそうだ。つまりそれは人格障害的 characterological、かつ力動的 psychodynamic な問題がそこに大きく絡んできているからであるとある。(この本の紹介文より)この治療法は週二回、全体で24回のセッションからなる、と言うのだからかなりマニュアル化された治療法である。
2013年の論文ではどのようにその内容に変化があったのか興味深い。そこでこの2013年の論文を読むと、この治療法が、パニック障害のみならず、DSM-IVの不安性障害、クラスターCパーソナリティ障害にも拡張されることについての論文なのだ。その抄録によると、パニックや不安においては分離、自立、怒り、罪悪感をめぐる精神内界における葛藤がパニックの発症とその継続に関係しているという。そして治療ではパニック発作の意味や状況を検討し、それに関係した精神内界の力動、発達の要因、転移などについて検討することで、それらの力動の認識と理解を高めることである、と言う。