この論考、あとはぐるぐる推敲しているだけだ。でも推敲するたびに、少しずつ形が整ってくるのは少し快感である。
1.はじめに
この論考は我が国の精神分析学の世界において過去10年あまり継続的に議論が行われている「週一回精神分析的サイコセラピー」というテーマに関して、 現代的な精神分析理論の立場から再考を行うことを目的としている。
このテーマについての議論は当精神分析学会で一つの盛り上がりと学問的な進展をもたらしている。その流れを俯瞰した場合、そこに様々な議論が存在するものの、全体として一つの方向性や考え方が一定の支持を得ているようである。それは精神分析がもたらす治癒機序について、その意義や有効性を考えるためには、週4回以上の精神分析を前提としたものであるということだ。すなわち週一回の低頻度の精神療法を精神分析的に行うことは非常に難しいと言う考え方である。その議論そのものは一貫し、整合性のある議論と言える。しかし他方には、精神分析理論を学び、その影響を大きく受けた治療者が行う精神療法はその大多数が、週一回ないしはそれ以下の頻度で行われているという現実がある。その低頻度の精神療法において精神分析的な理解やそれに基づく技法の有効性が制限されるとしたら、それは非常に残念なことと言えるであろう。現代の精神分析は多元的であり、治癒機序に関しても様々なモデルが提案されている。その視点から、海外の文献を参照しつつ、週一回の精神療法における転移の扱いについての妥当性について検討を加える価値があろうと言う考えが、筆者が本稿をまとめる主たる動機である。
(以下略)