海外における理論
ところで目を海外に移すと「週4は転移を扱い、週1は転移を観察する」をプロトコールのように提唱している理論は私の調べた範囲では見られない。むしろ転移という問題に集中して扱う、しかも週4回未満の治療の存在がすぐに思い浮かぶ。それがいわゆるTFP(転移に焦点づけたセラピー transference focused psychotherapy. Clarkin, 2007) である。患者と治療者は最初に信頼に基づく関係を構築し、同時にしっかりとした境界を設定する。そして行動パターンや感情や自己感を探索し、それらがその人の対人関係の持ち方にどのような影響を与えているかを検討する。その際TFPに特徴的なのは、患者と治療者の転移関係における明確化、直面化、解釈が治療の主流となる(Gabbard, 448)ということだ。しかも治療早期から、転移の中でも特に陰性転移が扱われるとのことである。大丈夫だろうか、とちょっと心配になる。
このTFPはBPDの治療を目的として始まったが、他の障害を持つ患者についてもその対象を広げている。このTFPが興味深いのは治療構造が週2回という、週一回を基本とする治療者によっても手の届く範囲の構造であることだ。
ある実証研究ではBPDの治療に関して支持療法とDBTとの比較が行われ、TFPではメンタライゼーションの能力がより高まったとされる(Clarkin, et al, 2004(Clarkin, et al, 2004)。また別の研究 (Doering et al., 2010) では地元の経験ある治療者よりも症状や心理社会的機能等において効果があったという。
このうち前者においては、支持療法では毎週一回のセッションを行い、転移についてはそれをフォローしマネージするものの明示的な解釈を行わなかったという。それに比べてTFPでは積極的な解釈を行ったという。興味深いのは、ここで転移の解釈の侵襲性などについて、なにも特に論じていないということである。
そうこうしているうちに、次の本がどうしても必要になった。
ところが中古だと高くてとても手に入らない。アマゾンでKindle 版5251円。ちょっと痛いな。でも背に腹は代えられぬ。この論考にとってはどうしても必要な資料だ。そこに転移解釈を週2回で行う上での注意点などが書かれているかを知りたいのだ。