2025年6月16日月曜日

週一回 その13

 結論:現代的な視座から見た「週一回」について

  最後に現代的な視座から見た「週一回」についての総合的な論述を行う。

 第一章では、我が国の「週一回」に関する「コンセンサス」すなわち「週4回では転移解釈が可能だが週1回では難しいため、精神分析とは言えない」に関して、二つの問題点を指摘した。
 第一点目は、この線引きが恣意的である可能性である。「週一回では転移解釈が難しい」ということは一般的な傾向としては言えるかもしれないが、転移の集積は週4回という設定でも自然と生じない場合もあれば、週一回でも転移関係やその取扱いを含むより充実した関係性が築かれることもあるからである。
 第二点目は、「コンセンサス」は 数十年前に提唱された Strachey の提言を治癒機序として最上のものとして持ち越している点である。治癒機序の議論も多元的になりつつある現代においてそれを「平行移動」して論じることには問題があろうと言う点であろう。

 第二章では英語圏に見られる傾向について検討したのは上述のとおりである。そしてそこに見られる傾向は、我が国における「コンセンサス」と一部を共有するものの、それとの違いも明らかであるという点だ。その特徴をまとめるならば、精神分析と精神療法の差はむしろ相対化されており、面接頻度に関して言えば、週一回も精神分析的精神療法として数えられるということである。ただしそれはスペクトラム上はより支持的な要素が強まるものとして扱われているのだ。


(以下略)