先日注文した例の本(Yeomans, FE, Clarkin JF, & Kernberg, OF (2002). A Primer of Transference-Focused Psychotherapy for the Borderline Patient. Northvale, NJ: Jason Aronson.),キンドルで一生懸命読んでいるのだが、隔靴掻痒の感がある。「週2回の精神療法ではヒアアンドナウの解釈は難しい」という種の論述がほとんど出てこない。それを引用するつもりで買ったのに。具体的的にどのように転移解釈を行うか、その時に注意すべきことは、などのことが書かれていない。そのかわりボーダーラインの病理一般について書かれていて、その記述は基本的には精神分析におけるそれと変わりない。あたかも分析も精神療法も特に区別しないという感じなのだ。これでいいのだろうか?まあ今後も時々目を通してみることにする。
海外の精神療法についての文献としては、グレン・ギャバ―ド 先生の「精神力動的精神療法」(池田暁史訳、岩崎学術出版社)を読んでみる。
(中略)
次にヘンリー・ピンスカーの「サポーティブ・サイコセラピー入門」(秋田、池田、重宗訳、岩崎学術出版社,1997) を参照してみる。
(中略)
しかしこのようにあれこれ考えていくうちに、何か大きなミスを犯しているような気持になってきた。こう考えてはどうか。そもそも週4回以上の精神分析ではなく、頻度の低い分析的な精神療法が論じられるようになり、それが表出的と支持的に分かれているということは、もちろん分析的な週一回はアリ,という結論が事実上は出ていると言ってもいいのではないか。そして表出的な療法では恐らく「平行移動」は大いに行われている。これまで述べたTFPすなわち転移に焦点づけられた治療も結局は、「表出的な精神療法」のことなのだ。でもそれではインパクトが少ないので、それを表出的な手法のエッセンスとして「転移に焦点づけされた」という名前を付けているのである。だからこそその入門書 primer を5000円もかけてキンドル版で購入して読んでも、肝心の転移を週2回で扱う上での注意、といった問題が出てこないのだ。そもそも彼らはそれを問題にしていない‥‥。何か私はずいぶん遠回りをしていたという気持ちになった。まあそのことが分かっただけでも5000円の元を取った、と思うようにしよう。