2023年7月7日金曜日

レジデント向きテキストの原稿 「変換症」1

 季刊精神科Resident Vol.4 No.4 特集 「身体症状症」 に向けて書いている。

 変換症

本症は従来は転換性障害 conversion disorder と呼ばれていたが、DSM-5の日本語版(2014)では、「転換性障害/変換症(機能性神経症状症)」という呼称を与えられている。その後に公開されたICD-11(2022)では、conversion という言葉も消え、解離性神経学的症状症 dissociative neurological symptom disorderとなった。さらに2022年のDSM‐5のテキスト改訂版(DSM-5-TR)では「機能性神経症状症(転換性障害/変換症)」に変更された。この様な頻繁な名称の変更の背後には、転換(変換)conversion という概念ないしは表現を今後は用いないという世界的な傾向がある。ただし本稿では変換症という呼び方に統一して論じる。

なお本症は、DSM-5ではあくまでも「身体症状症および関連症群」の一つとして、すなわち身体症状症、病気不安症と並んで分類されている。他方ではICD-11では本症はあくまでも解離症群の一つとして位置づけられているので注意を要する。。
  変換症では随意運動や感覚機能の異常等の症状がみられるものの、他の神経疾患や医学的疾患では説明が出来ないという特徴を持つ。具体的には麻痺ないしは脱力、振戦やジストニア、歩行障害、異常な皮膚感覚や視覚、聴覚の異常などが見られる。また意識の障害を伴う癲癇発作に類似する症状(いわゆるPNES,心因性非癲癇性けいれん)を示すこともある。
 DSM-5 では変換症の診断には以下の4項目が必要とされる。