2014年2月5日水曜日

職場におけるいわゆる「新型うつ病」について(8)


職場恐怖への対処
まず一つ言えるのは、「職場恐怖」(職場に対するフォビアのことを、これからこう呼ぶことにする。)は甘えでない以上、そのフォビアが悪化するような対処、すなわちもとの職場に戻るといった対処はすべきではないということである。極力もとの職場ではなく、異なる部署に移すべきである。当人に厳しく当たった上司の姿が見えない職場と火曜日がいい。そうでないと恐怖症は簡単に再燃する。
 と言ってももちろん職場によっては零細企業などでその様な余裕がない場合もあるであろうから、「可能な限り」ということになる。私の印象では日本の職場ではしばしば押しが強く、威圧的な同僚が、上司でもないのに幅を利かせることがある。クリニックだと受付の事務さんが強大な力を振るい、雇い主や医者やその他の職員を精神的に威圧、圧迫しているということがある。その様な人こそ解雇するべき道はないのか?その様な同僚に恐れをなして、直接対決をせず、気が弱いが有能なスタッフが次々と職場恐怖に追いやられるという状況はとても多い気がする。
私のある患者さんへの対処として、勤め先の会社の関係者にこのような話をしたところ、ある人事担当の方は、「そんなことを言ったら、みな自分の部署に不満を持って、他の部署に行きたがってしまいます。彼だけを例外にするわけにはいかないのです。」このような立場をとる人の大半は、「職場のうつイコール甘え」という立場であり、職場に行けなくなった人たちに対しては手厳しい態度を取る傾向にある。その人のサディズムの表れの可能性すらあるのだ。しかしむしろ私はそれらの人こそ「例外」扱いをするべきではないかと思う。アスペルガー障害などで職場で不適応を起こしている人々が一番職場でサバイブできる方法は、彼らを「障害者雇用」の枠として雇用し、「例外扱い」する。就業中に外出しようがマンガを読もうが放っておく。その代わり仕事はきちんとその日の終わりまでにやってもらうのだ。職員をいちいち細かい就業規則で縛ることは得策でない場合が多い。
 さて以上の対処は如何にも甘いわけだが、それと矛盾するようなことも私は言いたい。それは職場恐怖に陥った職員はしばしば解雇もやむなし、ということだ。あらゆる手を尽くしても職場に来れない人をどうして解雇しないのかと私はいつも不思議に思うことが多い。アメリカに住んでいた時、同様の問題はほとんど聞いたことがなかった。職場に行けなくなったらその人は職を失う。それは理由がどうであれある意味当然のことだと思う。ただしそれが職場でのハラスメントにより起きたことであれば、堂々と法廷で争えばいいことである。
私は同様のことをたとえば登校拒否や学校恐怖に陥っている生徒たちについても考える。構造は似ている気がする。自宅学習をするという形でもいいから、史観を受けさせ、合格したのであれば高校を卒業したことにすればいい。アメリカではホームスクーリングは日常的に見かけるのだ。