2014年2月4日火曜日

職場におけるいわゆる「新型うつ病」について(7)

フォビアの二つの特徴
フォビアの特徴を三つあげよう。
l  恐れの対象から離れている時には、通常の社会生活を営むことができる。
l  恐れの対象に近づくことに対しては非常に抵抗を示し、かつその時が近づくにつれて抑うつや不安が高まる。
l  恐れの体験がより強烈になった場合にはトラウマとしての性質をおび、PTSD的な色彩を持つ。
つまりフォビアの場合、恐れの対象を避け、その存在を否認したり忘れようとしたりする行動が目だつ。問題は、その恐れの対象が学校や職場といった、その人が本来日常的に通い、勉強や仕事をしなくてはならない場所になっている場合である。その人はいろいろ理由をつけて、そこに通うことを回避するであろうし、そうしなくてはならない時になると、さまざまな身体症状を起こす可能性がある。しかしそれ以外の時は、そしてそれを回避することができた時にはむしろ解放されて上機嫌になったりする。
 この現象が学校に通う生徒にあらわれた場合がいわゆる学校恐怖症である。彼らは朝登校の時間になると不安に襲われたり体の具合が悪くなったりする。しかし下校時刻以降や、休日の場合は、自分だけが学校に通っていないことからくる後ろめたさから解放されて、むしろ元気になり遊びに出かけたり、翌日の学校の準備をしたりする。しかしそして次の朝を迎えると具合が悪くなるという同じ問題を繰り返す。そしてこのことが仕事場に対して起きた場合に、いわゆる現代型うつ病と呼ばれる状態が生まれる。
もちろんすべての現代型うつ病が、実はフォビアであったという主張をするつもりはない。うつ病とフォビアはしばしば重なるだろう。それは仕事場での外傷的な体験をもとにしばしば陥る状態である。しかし「新型うつ病」としての様相を呈している場合にしばしばこの背後に潜むのがこのフォビアである。
 ところでこのように書くと一つの疑問が生じても不思議ではない。どうしてフォビアの数が最近増大しているのだろうか?これに関しては私自身もよくわからない。日本人がはちょっとした職場の上司からの叱責にショックを受けやすくなっていると同時に権利の主張を行う傾向が強くなっているのだろうか?それとも単に「甘えて」いるのだろうか?
もちろんこの最後の「甘えて」いる、はフォビアともPTSDとも矛盾する。恐怖対象に対して「そんなのは甘えだから、怖がらずに慣れろ!」は基本的に逆効果である。もちろん行動療法的に、恐れているものや環境に慣れていく手段が取られることはあるが、それは保護的な治療環境の中で徐々に恐怖対象に慣らしていくからこそ効果があるのであり、甘えと決め付けて下の職場に放り込むことは症状の悪化につながる。

結局その増加の原因はわからないまでもこれを一つの治療の対象となるべき障害と捉えて、その性質を知り、対処法を考えることが大切だろう。