2025年5月23日金曜日

遊びと愛着 推敲  10

  ところでここで Holms が述べる脳の同期化とはどのようなものなのか?

脳の同期化のプロセス

 最近脳の同期化の問題が取りざたされている。二人の人間に何らかの交流をしてもらい、両者の脳波やfMRIの撮像により同期化が見られることが、その両者の交流の性質を反映しているということだが、どういうことだろうか?二人の脳が、電気的につながっているわけでもないのに、脳波の同期化ということがなぜ起きるのか。チャット君にも手伝ってもらい、以下のことが分かった。

まず同期化とは周波数のみならず位相も一致するという現象を言うという。それを「PLV(Phase Locking Value)」という。まるで「脳波の足並み」がぴったりそろった状態なのだ。全く不思議なことだが、なぜそれが起きるのか。例えば二人が一緒に映像を見たり、音を聞いたりすると、きっと位相は合うだろう。ある瞬間に二人が同時に一緒の体験をするからだ。でも会話をしていてもそれがなぜ生じるのだろうか。それについていくつかの仮説があるという。ここからはチャット君の文章を引用する。

① 共有された外部刺激による時間合わせ  たとえば二人で同じ映像や音声を同時に受け取ると、その入力に対する脳の応答タイミングが一致してくる。

② 相互の身体的ミラーリングによる同期 人間は無意識のうちに、相手の仕草・表情・声のトーンを真似ることがある。 これを「ミラリング」「感情的同調(emotional entrainment)」というが、実はこれも脳波のリズムを揃える力があるとされている。たとえば、笑顔で話す相手に自分もつられて笑顔になる。そこでは例えば表情筋の動きが一致するだろう。

③ 心的共鳴(mental resonance)仮説

二人の間に深い共感や理解が生じたとき、内部状態が収束してくるという仮説。たとえば、二人が「今、同じことを“わかっている”」という瞬間。その「わかった!」という内的状態が、偶然にも脳内の同じネットワークを活性化させる → 結果として、同じ周波数帯+同じタイミングで活動が起きる

これは、「意味の共有がタイミングを揃える」という、かなり興味深い逆照射的仮説だと思う。

④ 一緒に何かをすること自体が、共通のタイムスケールを生む

社会神経科学の研究では、共同作業や会話、共感的な視線の共有などが、 共同注意(joint attention)や共同意図(shared intentionality)を生み出すとされている。

これはつまり、二人が別々のリズムで動いているのではなく、「この時間を共にしている」という感覚を持つとき、 そのリズムが徐々に「調律」されていく。この「共にある」という時間的構造が、脳活動にも反映されるのではないか――という考え方である。