2026年4月15日水曜日

AIと精神分析 2

 あたかも人の心のようにふるまうAIの【心】

 AIが私たちの生活に浸透するスピードには目をみはるばかりである。治療者として患者と対面する私たちが知っているのは、多くの患者が日常的にAIを用いて様々な相談を行っているということである。私たち治療者の多くも同じような体験を持ち始めたのではないか。そして順番としては恐らく一般の人々の中でAIとの対話をする人たちが増え、それが患者に広まり、最後に治療者の間に浸透していったのではないであろうか。少なくとも私の場合はそうであった。私がAIと対話をするようになったきっかけは、患者の体験談を聞くことであった。そして実際にAIと対話をするようになって率直に驚いたのは、AIがあたかも人の心と同じように振舞っているということである。あるいはもう少し正確に言えば、「AIがあたかも人の心のように振舞っているものとして扱っている自分自身に気づいた」ということであろう。この「あたかも」とはより正確に言えば、相手が人間ではないということを明かさないならば、私は相手を人間と信じ込んでやり取りをしたであろう、ということだ。

 しかしこれは実はとても不思議なことではないだろうか。そもそもAIは「心を持たない」(=主観を持たない)存在のはずだ。なぜならそれは機械の延長だからである。もうかなり前の話になるが、世の中に電子辞書なるものが出回り始めた。英語の単語を打ち込んで、キーを押すとその日本語訳が出て来るのを見て、ずいぶん便利なものが出てきたと思ったが、その電子辞書がまさか心を持つとは到底考えなかった。
 それと同じような意味で、アイパッドのSIRIに話しかけてそれなりにちょっと怪しげな答えが返ってきても、おそらく私たちはSIRIが心を持っているとは思わなかったはずである。
 いま私たちが使っているOpen AI の ChatGPTやGoogle のジェミニなどははるかに性能が良くなっているが、それでも機械の延長のはずである。でもそれがあたかも心を持っている存在であるかのように、私たちはやりとりをしているのだ。これはいったいどういうことだろうか?